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権力の大罪 丸山参院議員、仙谷氏を提訴

「仙谷氏は闇指揮権を発動した」

尖閣沖中国漁船領海侵犯事件

 昨年9月7日の尖閣沖中国漁船領海侵犯事件に関連して、民主党の仙谷由人政調会長代行(65)に名誉を毀損されたとして弁護士で自民党の丸山和也参院議員(65)が同年11月、仙谷氏を東京地裁に提訴した。その丸山議員が今年11月17日に元参院議員の村上正邦事務所(東京・永田町)で開催された「日本の司法を正す会」で、「仙谷氏は(尖閣沖中国漁船領海侵犯事件で)闇指揮権を発動した不法行為を隠すため、私を社会的に抹殺しようとした」と述べ、提訴の顛末を明らかにした。

 丸山議員は、中国漁船領海侵犯事件は明白な公務執行妨害だから、起訴して判決、判決内容によっては強制送還になることは自明の理だと思っていた。ところが事件は急転直下、那覇地検が昨年9月25日に中国との外交上の関係を配慮して、釈放を決定した。

picture 【プロフィール】まるやま かずや
1946年生まれ、兵庫県揖保郡新宮町(現たつの市)出身。69年、早稲田大学法学部卒業。国家公務員上級職試験合格、法務省職員となる。70年に司法試験合格。76年4月、ワシントン大学ロースクール入学。卒業後、ロサンゼルスの法律事務所に3年間勤務。弁護士。参議院議員。趣味は、座禅に寒中水泳。

 丸山議員は「どう見てもおかしい」と思い同日午後、仙谷氏(当時は官房長官)に電話した。提訴につながったのはこの一本の電話だった。

 電話を受けた仙谷氏は「丸山君、どうしたらええんや」と聞いてきたので、丸山議員は「法に従って粛々とやるということは、逮捕した以上、起訴、判決、強制送還と少なくてもそこまでは行くべきだ。それは当たり前だろう」と答えた。

 すると仙谷氏は「そんなことしたらAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が吹っ飛んじゃう」と言う。わが国は翌月の10月、横浜みなとみらいでAPECを開催するホスト国だった。

 それで丸山氏は「APECが飛んでもいいじゃないか。毎年やっているAPECだ。これだけの国益がかかっていて、しかも日本の法治主義が試されている所で、こんないい加減なことしたら中国の属国になるぞ」と言った。

 すると仙谷氏は「属国なんて、今さら言うことではない。もう属国だよ」と、こう答えだという。

 これを聞いて丸山氏は唖然とした。

 「仙谷氏は『俺が命令して釈放させた』とは決して言わないが、明らかにそれを前提とした会話がなされたということと、『もう(中国の)属国だよ』と堂々と発言している」(丸山議員)

 そこで丸山議員は、昨年10月18日の参議院決算委員会でこの点を追及した。

 「ところが仙谷氏は、内心びっくりしたんでしょう。答弁で『最近、健忘症にかかっているのか分からないが、丸山氏が暴露したような会話をした記憶は一切ない』と否定して逃げ切った」(丸山議員)のである。

 その直後の記者会見でも、記者から「APECを配慮して釈放の指揮したのじゃないのか」とさかんに追及されたが、仙谷氏は「覚えていない」と、当日はそれで突っ張った。

 「ところが、一晩考えた仙谷氏は、翌日の内閣官房長官定例記者会見で、一転して私に対する人格攻撃に出てきた。キャラクターアサシネイション(人格抹殺)ともいう卑劣な手法だ」(丸山議員)

 要するに昨年10月19日に、仙谷氏は「丸山のようないい加減な人間の、いい加減の発言は関与しない」と言い出したのである。

 丸山議員は、菅前政権の内閣官房参与だった松本健一氏が、産経新聞のインタビューで「釈放は仙谷氏らの政治判断によるものだった」と述べたことに触れ、「法律に基づかない、裏の指揮権発動があったということだ。刑法の公務員職権乱用罪にあたる。仙谷氏はこれを隠蔽するために、自分に『いい加減な人』というレッテルを貼り、問題をすりかえた極めて悪質な犯罪だ」と怒りを隠さない。

 さらに、丸山議員は「調べたら、議会での議論ではなく、官房長官の定例記者会見で特定の人物について、こいつはいい加減なやつだ。こんなことを発言する。こんなやつは相手にしないと言ったことは一度もない」ことに言及。「例えば、トヨタのようないい加減な会社のいい加減な車、私は買おうとなんて思ってないよ、と言うのと全く同じだ」と、仙谷発言の不当性を強調した。

 これに加えて、仙谷氏が許されるはずもない発言を撤回するのではなく、敢えて強弁せざるを得なかったことの背景を次のように説明した。

 「仙谷氏が人格抹殺の発言をせざるを得なかったのは、この問題が菅内閣が飛ぶかどうかの大きな問題だったのと、私が具体的な証言をしてくると、仙谷氏が『APECが飛ぶよ』と言った意図が暴かれて、政治介入したことがばれる。

 だから、丸山はいい加減な男で、いい加減なことを言うのだから、相手にしなくていいよ、と極めて素人にも分かりやすい、お茶の間にも沁み込みやすい、そういう次元の手法で抹殺しようとした」と言うのだ。

 だが、仙谷氏の方も引かない。その後の記者会見でも「もし、ある種の友人関係で話したとすれば、それを国会質問という公的な場で引用するのは不本意だ」と強い不快感を示したのである。

 これに対し丸山議員は「仙谷氏と個人的に会ったのは過去、一回しかない。裁判で会ったこともない。電話したのも、これまでたった3回きりだ。個人的に親しいとか全くない相手だ。しかも、電話したのは抗議の電話であり、詰問の電話だ。ところが、生年月日も7日しか違わない友人関係で話したことを持ち出すのは非常識ですね、という形で、こういう次元に陥れようとしている」と反論する。

 そして、丸山議員は「個人的には名誉の戦いであり一騎打ちだが、ただ本音は裏指揮権発動の追及だ」と、裁判を通じて仙谷氏の違法行為を追及したいという真意を語った。

 丸山議員は産経新聞(2011年9月26日付第1面)に掲載された記事を参照しながら、「ニューヨークの国連総会に出席していた菅前首相と電話でやり取りしていた仙谷氏は、最終的に釈放するしかないと決断して、ここからは推測が入るが、おそらく検事に釈放しろとまでは言ってないと思う。ただテープを地検から官邸に(取り)寄せている。それで、テープに瑕疵がある、こんな証拠で起訴できるの、有罪にできるのと、こういうことを、おそらく言ったと思う。暗に起訴はするな、といった意図を伝えたと思う。少なくとも検察が起訴するかしないかの、検察の手持ちの証拠をまず検察が判断する前に、官邸にもってこさせて調べあげること自身が、すでに政治介入であり、闇の指揮権発動を前提にしている」と結論付けたのである。

 ただテープのどういうところが問題なのかとなると、さすがにそこは松本氏も口を濁している。

 指揮権発動というのは、刑事事件の起訴するしないというのは、起訴独占主義により検察官が独占している。 

 これに対する政治の側からその機能を、一定の場合、チェックすることができる指揮権発動というのが検察庁法第14条にある。

 ただこれは個々の検察官にできるわけではなく、法務大臣が検事総長に対して指揮する、検事総長を通じてしかできない一定の枠が設定され、限定されいている。

 過去、指揮権発動がなされたのは、1954年の造船疑獄事件の一回だけだった。東京地検の捜査主任検事だった河合信太郎による大野伴睦の取調べが始まって、有田二郎などたくさんの国会議員が逮捕されたが、自民党幹事長だった佐藤栄作をまさに逮捕する寸前に、吉田内閣の犬養健法務大臣が重要法案(防衛庁設置法案と自衛隊法案)の審議中を理由に検察庁法第14条による指揮権を発動し、佐藤藤佐検事総長に逮捕中止を指示した。それで佐藤栄作は逮捕を免れたケースである。

 これは検察庁法ができて、ただ一回行われだけだ。

 しかもこのときは、法的には完全に正しく、手続き的にも問題がなかったが、その当否が政治的に問題になって、その日の午後、犬養法相は辞任したし、その数ヵ月後には吉田内閣も総辞職するはめになった。

 「ところが今回の事件では、そうした手続きをとっていない。事実上、闇の指揮権を発動している、だから二重におかしい。

 こんなことが法治国家で行われるようになると、時の官房長官が検察庁にも影響力を行使できるし、裁判所にも電話できる。例えば、小沢秘書裁判にしたって、こんな証拠で有罪にできるのかと官房長官が電話したり、あるいは証拠上は厳しいようだけど頑張ってやれよとか、いろんなことができることになる。(これは)少なくても法律家としては、とんでもないことだと思う」(丸山議員)と言うのである。

 なお、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船領海侵犯事件で、中国人船長を処分保留のまま釈放したことについて、米大手シンクタンク、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員は「アジアの平和と安定の将来に危険なシグナルを送ってしまった。中国の圧力に対する日本政府の降伏は日本、米国、地域にマイナスの影響をもたらすだろう」と分析し、日本の対応を批判している。

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