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今月の永田町

「野田、小沢、谷垣」3つ巴 会期の大幅延長が不可欠

 田中直紀防衛相と前田武志国土交通相に対する問責決議案を4月20日、参院本会議で可決し衆参両院での全面審議拒否戦術に出たはずの自民党が、早くも腰砕けとなった。自民党と民主党が消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案について5月8日の衆院本会議で審議入りすることに合意したからだ。


 自民党は公明党が問責閣僚の出席する委員会のみの審議拒否に出たため、方針転換を余儀なくされ、谷垣禎一総裁は「初めからちょっと気合が入り過ぎて重めの球を投げた」と国会戦術の誤りを暗に認めざるを得なかった。

 一方、4月中の審議入りを目指していた民主党も、4月26日の衆院本会議で関連法案を扱う特別委員会の設置にこぎつけたが、特別委で審議を予定していた関連11法案のうち、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)関連3法案と年金交付国債発行を盛り込んだ国民年金改正案の分離を求めた自民、公明に譲歩して、それぞれ内閣、厚生労働両委員会でようやく審議できることになった。

 特別委の委員長には中野寛成元国家公安委員長(民主)が就任。筆頭理事は民主党が鉢呂吉雄前経済産業相、自民党は伊吹文明元幹事長が決まり、自民党からはほかに町村信孝元官房長官、野田毅党税制調査会長らベテランが加わる本格布陣となった。

 「特別委での審議が激論になるのは間違いないので、6月21日の会期末までの審議時間が足りないことが大きな問題だ」と語るのは自民党中堅幹部である。

 趣旨説明は8日( 年金関連2法案)、10日(子育て関連3法案)、11日(消費増税法案など税関連2法案)に順次行われるが、野田首相の外交日程は窮屈だ。実際の審議入りは、首相が日中韓首脳会談出席のための中国訪問から帰国した後の16日から。直後の18、19の両日には米キャンプ・デービッドで開催される主要国首脳会議(G8)出席のため訪米するので、事実上、審議日程は会期末まで一カ月あるかないかだ。

 消費税が最初に導入された時には審議時間は80時間以上かかった。今回はそれ以上かかるのではないかとみられており、法案成立にこぎつけるためには8月の旧盆前あたりまでの大幅な会期延長が不可欠となろう。

 ところが、それを早期の解散・総選挙を求めている自民、公明両党がすんなり受け入れるわけがない。自民党としては審議入りは認めたものの、民主党が主張する最低保障年金や年金一元化を撤回させ、独自の対案である「社会保障基本法案」(仮称)を連休明けの早い段階に策定して同党の社会保障政策を丸のみするよう迫る方針だからだ。石原伸晃幹事長は「自民党の考える社会保障と民主党のできそうもない社会保障の違いを明らかにしなければいけない」と対決姿勢を露わにしている。

 さらに、問責2閣僚の更迭要求を継続して首相を追い詰め、首相から話し合い解散の確約を取り付けたい考えだ。内閣不信任案提出の選択肢も残している。

 ところが、ここに来て自らの政治資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で無罪判決を受けた小沢一郎元代表の復権という新たな波乱要素が加わってきた。「自民党の石原幹事長は、小沢さんは『オレは無罪となった。今度は消費税賛成と言うかも知れない』と語ったが、それはないだろう。やはり、増税には絶対反対で通す。その姿勢を貫くことが、次の衆議院総選挙を勝ち抜くのに最良の政策だからだ」と野党幹部は指摘する。

 従って、「野田vs小沢」の党内抗争が激化していくのは不可避となろう。早くも、反小沢と親小沢の火花が散り始めた。かつて親小沢で現在は反小沢の藤井裕久党税調会長は野党が要求している小沢氏の証人喚問について「早くやって早く解決した方がよい。トゲは抜くべし」と前向きな考えを示した。

 一方の自民党。こうした党内の内ゲバ化をにらむ谷垣総裁は「一言で言えば(首相の)本気度が試される局面だ」とし、「政治生命を懸ける」という消費増税法案を成立させる覚悟があるなら「小沢氏を切り捨てよ」と迫っている。その上で話し合い解散に持ち込むため、党の独自色を出すことにも余念がない。

 例えば、自民党はサンフランシスコ講和条約の発効から60年目にあたる4月28日、党本部で主権回復記念日国民集会を共催。主権回復記念日を祝日にするよう衆院に提出した祝日改正法の制定を目指す意欲を強調するとともに、保守色を前面に押し出した党改憲案「日本国憲法改正草案」を公表し、国民運動を盛り上げて行く意向を示した。民主党には薄い「国家主権意識」を対立軸にして選挙を戦う考えからだ。

 だが、仮に首相に小沢切りをさせても解散に追い込めなければ、9月の党総裁選での谷垣氏の再選はない。そのため、谷垣氏としては、是が非でも解散に持ち込み、過半数を制することができなくても比較第一党となって次期首相のポストを射止めることが最優先の戦略課題だ。全面審議拒否という国会戦術が勇み足になってしまったのはそのせいでもある。

 野田、小沢、谷垣の3氏はどう攻守を展開するのか。国会終盤戦は、3氏の三つ巴の駆け引きが展開されよう。

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