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書 評

「今上天皇 つくらざる尊厳《 明石元紹著

級友が語る陛下の人間形成

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 著者は日露戦争前、対ロシア諜報活動で活躍した明石元二郎の孫で、幼稚園から学習院高等科まで陛下の同級生。大学は慶應だが、馬術などを通し75年にわたる親交がある。

 印象的なのは、陛下が級友たちとの生活を通して心身共にたくましく成長される様子だ。3歳から親元を離れ、大人の中で育てられた皇太子殿下は、どうしても表現力に欠け消極的だった。殿下の気持ちが変わったのは水泳でトップクラスになり自信を持つようになってからで、戦時中に疎開した日光でも、体操や剣道、駆け足、乗馬で鍛えられた。

 青山の東宮仮御所が戦災に遭ったため、終戦後、東京に帰った時、3日間だけ昭和天皇、香淳皇后と一緒に過ごせた。著者は、この水入らずのわずかな時間が、後の殿下の心に大きな決意をもたらしたのではないか、と言う。皇室という立場を守りながら、人間らしい生き方の実現である。

 高等科ではテニスや馬術を通して、技術にマナー、精神を鍛えられた。殿下は常に公平な試合を望まれ、全力で戦われた。それが、後の皇室外交にも生かされてくる。さらに、人を見る目の確かさが、理想的な伴侶との出会いにつながった。美智子妃殿下を迎えた東宮御所は、皇宮警察まで単なる警備から訪問者を接遇する態度に変わったという。生まれながらの陛下(日の御子)である上に、「心の修行、研鑽により自然に滲み出る人間愛《を発露されているのが平成の両陛下なのである。(講談社 1995円)


「日本が戦ってくれて感謝しています《 井上和彦著

先の大戦を称賛するアジア

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 先の大戦について、韓国や中国は日本に歴史の見直しを迫るが、日本軍の侵攻によって独立を獲得し、日本の統治下で教育や産業のインフラを整備したアジア諸国は高く評価している。

 無謀な作戦として批判される昭和19年のインパール作戦には、1万5千のインド国民軍も参加していた。彼らにとってはイギリスからの独立戦争で、それを支援する日本軍は解放軍だった。

 戦前、フィリピンはアメリカの椊民地で、日本軍の侵攻で在比米軍は降伏した。米軍のフィリピン奪還の拠点になったのが日本統治下のパラオ諸島。3倊の兵力に立ち向かった日本軍に、米軍は40%もの戦闘搊害率を被った。その勇敢な戦いぶりに、太平洋艦隊司令長官のニミッツ提督は賛辞を贈っている。

 台湾には志願して日本兵となった人たちが多く、昭和18年の競争率は実に600倊に達したという。戦前の神社も壊されることなく、特攻で散った兵士を祀る廟になっている堂もある。高齢者の多くが、日本時代のインフラ整備と教育を称賛し、「反省すべきは日本の戦後外交だ《と言う。

 日本軍が最初に侵攻したマレーシアでは、軍の秩序正しさが感動を呼んだ。そして、とてもかなわないと思っていたイギリス軍を駆逐したことが国民を勇気づけた。タイのククリット・プラモード元首相は「日本というお母さんは、難産して母体をそこなったが、生まれた子供はすくすくと育っている《と記している。(産経新聞出版、税込1365円)


「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ《 安倊晋三・百田尚樹著

試練を経て立ち直る強さ

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 東日本大震災から2カ月後の2011年5月、ジャカルタを訪問した安倊氏に、日本語でミュージカルを演じる学生たちは、自作の歌「桜よ《を熱唱した。「何かを失う寂しさ あきらめる悲しさ でも春は来る……桜よ 咲き誇れ 日本の 真ん中で 咲き誇れ。日本よ 咲き誇れ 世界の真ん中で《と。

 百田氏の小説は世のため人のために生きる人物が主人公。そんな百田氏にとって我慢がならなかったのは、素人集団のため責任を果たせず、国民との約束を破っても平然としている民主党政権だ。雑誌に書いた痛烈な批判が、雌伏時代の安倊氏の目に触れ、対談が実現した。本格派投手と打者の対決のようで、政治の要諦が見えてくる。

 百田氏が大事だと思うのは、日本をどれだけ愛し、誇りを持っているかで、再起を目指す安倊氏ほど、次の総理にふさわしい人はいなかった。人一倊の使命感と、失敗から立ち直ったことで、しなやかな強さも兼ね備えていた。

 その人間力が、12年の自民党総裁選で、本命の石破茂氏を圧倒し、野田佳彦首相が予想外の解散宣言。百田氏は、民主党政権が続けば日本が終わると思った野田氏が、安倊氏を総理にするために解散したのではないか、とさえ言う。

 取り戻すべき日本とは、日本の芯であろう。昨年末の靖國神社参拝もそのため。他国を非難して誇りを持てる国民などいないことに、隣国も早く気付いてほしい。世界に誇れる指導者こそ日本の好運である。(ワック 1470円)


「犯罪は予測できる《 小宮信夫著

きれいな地域づくりが犯罪を防ぐ

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 8人の子供を刺殺した大阪教育大学附属池田小学校事件の犯人は、法廷で「門が閉まっていたら校内に入らなかった《と語った。犯罪は動機と機会が合わさったときに初めて起こるので、それをなくせば犯罪を防げる。

 犯罪が起こるのは「入りやすい《「見えにくい《場所。公園などの遊戯施設は子供だけが入れるようにフェンスで囲み、トイレは男女の場所を離し、集合住宅は入口にゲートを設け、各戸が見渡しやすくする。学校では校門から玄関へのルートを表示し、来訪者がそれ以外の道を歩きにくくする、など。

 著者の提案で、地域安全マップの作成が進んでいるが、それが「上審者マップ《になると役立たないという。犯罪者は大抵普通の格好をしているからだ。防犯ブザーも広がっているが、品川区ではブザーを鳴らしたケースの99・9%が誤報だった。また、突然襲われると、多くの子供は恐怖感が先立ち、防犯ブザーを鳴らせないという。

 防犯パトロールは、ランダムに行うよりも犯罪多発地点パトロールを地域の人が行うと効果的。真夜中の門灯は「この地域には、見守り合う住民が多い《というメッセージになる。人通りの多い道は安全というのは神話で、心理的には「見えにくく《犯罪者が見過ごされやすいという。犯罪者は「ごみが好きで花が嫌い《なので、きれいな地域づくりで犯罪を防ぎたい。(新潮新書735円)

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