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今月の永田町

テロ準備罪法案成立へ会期延長も

 最終盤に入った第193国会は、「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐって与野党の攻防が激化し、6月18日までの会期が延長される可能性も出てきた。政府・与党は7月2日投票の都議選を念頭に、延長しても小幅にとどめたい考えだが、野党は政府案の廃案を目指し、ここにきて対案を新たに提出するなど徹底抗戦の構えだ。


 5月の連休明けに注目された国会日程の一つが、民進党の提出した鈴木淳司衆院法務委員長(自民)の解任決議案の扱いだったが、9日夜の衆院本会議で賛成少数で否決された。この決議案は、鈴木委員長が法務省の林真琴刑事局長を政府参考人として委員会に出席することを与野党の合意を経ずに職権による採決で決めたことが「強権的だ」と批判した民進党が2日に提出していたものだ。

 自民党中堅幹部は「トンネルをひとつ抜け出した気分だ」と語り、「法務委員会でのテロ等準備罪法案の審議時間は19時間を超えた。30時間がメドになるので、あと数回委員会を開けば採決できる段取りだ」と続けた。

 政府・与党としては、できるだけ早く同法案の審議を再開させ、可能なら、17日の委員会採決に持ち込み、18日の本会議で可決させたいとのスケジュールを描いている。

 ところが、これに徹底抗戦の構えなのが民進党だ。政府・与党が、国際組織犯罪防止条約への加盟には「テロ等準備罪」法案の成立が必要と主張しているのに対して、民進党は同罪を新設しなくても加盟は可能との立場なのだ。蓮舫代表は同改正案について「一般の方も対象になるリスクが相当大きい。内心の自由を脅かし、1億総監視社会になるような法案は要らない」と強調。9日の同党の「次の内閣」会合で、同改正案の対案を近く国会に提出する方針を確認した。

 その内容は、現在は殺人や内乱などに設けている予備罪の対象を、組織的詐欺や人身売買にも拡大。また、ハイジャック防止のための空港保安態勢で国の役割を一層強化する、という独自の航空保安法案を提出する。

 蓮舫代表は「テロ対策には個別の具体的な立法が欠かせない。足りない部分を埋めていくことが国民の命を守ることになる」と指摘する。だが、疑問なのはなぜ今頃になってこのような主張をするようになったのか、だ。

 公明党の井上義久幹事長は9日の党代議士会で「もっと早く、審議がスタートしたときに出すべきではなかったか」と批判したが、全くその通りだ。これについて、自民党幹部は「過去3度の国会でつぶしてきた改正案に、テロ対策の名目をかぶせることで成立させてしまうわけにはいかないからだ」と言い切った。

 つまり、国会閉幕1カ月前になって対案を提出し、審議未了に持ち込んで政府案をもつぶそうとの思惑がミエミエなのだ。

 したがって、政府・与党は対案提出による影響も考慮しながら審議時間確保の視点から会期の延長も含めて国会最終盤の運営戦略を組み立てなければならない。当面の課題としては、5月中旬から下旬にかけて国会に提出される衆院小選挙区の区割りを盛り込んだ公職選挙法改正案と天皇陛下の退位を実現する特例法案の扱いだが、これらは与野党の対決法案ではないため会期内成立は確実だ。

 気掛かりなのが、テロ等準備罪法案の衆院通過後に審議入りをすると与党で合意している性犯罪を厳罰化する刑法改正案の成立見通しだ。「公明党との約束でもあるので成立させなければならない。審議時間などを考えると多少の延長は必要だろう」と漏らす自民党中堅もいる。

 ただ、同時に念頭に入れなければならないのが、6月23日告示、7月2日投開票の都議選が控えていることだ。先の中堅は「公明党との約束を果たすといっても、猶予は会期末の18日から告示日の23日までの数日間しかない」とも指摘する。選挙戦に突入すればわき目も振らずに突っ走るのが政治家の常だ。だが、今回は自民党と公明党が敵対するという〝異常事態〟となっているのである。

 公明党は、国政選挙並みの重要な選挙と位置付けてきた都議選で今回、突如出現して都知事に就任し集票力のある小池百合子知事と連携したのだ。自公連携を都レベルで崩壊させ、選挙に有利な小池氏に乗り換えたのである。「完全に裏切りだ。これが東京だからなおさら影響は大きい」(自民都連幹部)と言える。 それ故、4、5日程度の延長なら、いっそのこと都議選後、7月中下旬頃の1カ月程度延長したらどうかとの声も出てきている。

 国会法で通常国会の会期の延長は1回しかできない。ゆっくりとした審議時間を確保し、共同でテロ等準備罪法案を成立させ、7月の下旬か8月の上旬あたりで内閣改造を行って都議選での傷を修復するとの計算だ。

 さらに、安倍首相が「2020年に新憲法を施行する」との目標表明も会期延長に影響する可能性がある。改憲項目を首相の指摘した自衛隊と教育無償化などに絞り込むとして国会の憲法審査会で議論を積み上げなければ前に進まない。

 ところが、民進党は首相の発言に反発。2度の延期後、11日に開催するはずだった衆院審査会も見送られ、延期を重ねている。参院も昨年12月以来、審査会が開かれていない。施行の年限を考えれば、来年秋には国会が発議することになろう。その前に改憲原案を3分の2以上の衆参国会議員が合意しなければならないため、「せめて改憲項目の絞り込みだけでも今国会中にやりたい」というのが首相の腹の内だろう。

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