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岸田派 政権戦略を練り直し

「大宏池会」構想も再浮上

 ポスト安倍の最有力候補とされ、首相からの禅譲を期待する岸田文雄外相を擁する第3派閥の岸田派が、政権戦略の練り直しを迫られている。安倍首相の任期がかなり長期になる見通しとなったからだ。また、近く麻生派と山東派が合流し、谷垣グループの一部も参加して党内第2派閥が誕生する見通しとなった。これに刺激され、岸田派内には政権を目指すうえでも麻生派(プラス山東派)、谷垣グループが再結集する「大宏池会」構想が再浮上している。


 4月19日、都内で行われた宏池会60周年記念の政治資金パーティーは超満員だった。ポスト安倍を狙う岸田氏に対して政官財など各界から関心と期待が寄せられ、会場は熱気に包まれていた。そこで登壇した岸田氏は穏健な性格にたがわず「いつの日か安倍時代の後が来るということを念頭に、今は力を蓄える」とのいつもの安全運転発言。

 その後、会場に到着した安倍首相は「(岸田氏が首相を目指すのは)もうしばらく我慢して政権を支えて頂きたい」と率直にあいさつ。それに、会場は笑いに包まれた。岸田支持者らは、もう少し辛抱すれば政権獲得の光が見えてくるのだろうといった安堵感の表れでもあったろう。

 ところが、そのおめでたい空気が吹っ飛び、岸田派内から不満が噴出したのが、その約10日後に語った安倍首相の改憲スケジュール発言を聞いたときからだ。首相はそのとき、「2020年を新しい憲法を施行する年にしたい」と語ったのだが、岸田氏ら聞き手によっては単なる改憲の決意表明には思えない。少なくとも、2020年まで自分が首相を務めているという意味であり、来年9月の総裁選での岸田氏への禅譲はなくなったという重大発言なのだ。

 「安倍さんが『もうしばらく我慢して支えてほしい』と言った『しばらく』とは、3年から4年の話であることがはっきりした。そんなに長く待てるか、首相の出身派閥の細田派だって安倍さんが辞めて本当に岸田を後継者として支援するのか、新たな候補を準備しているのではないか、といった疑念が募ってきたのが岸田派面々のホンネだ」と自民党幹部は指摘する。

 そこに新たな党内派閥の地殻変動が起きてきたことも岸田派にとって不安材料だ。麻生派(44人)と山東派(11人)および谷垣グループ(約30人)の一部による合流話だ。すでに麻生、山東両派幹部と谷垣グループの佐藤勉衆院議院運営委員長らは5月8日の会談で、新派閥の設立趣意書などを確認し、15日には麻生太郎副総理と山東昭子元参院副議長が詰めの協議を行い、国会閉幕を待って新派閥を発足させる運びとなっている。

 そうなると、現在、第2派閥の額賀派(55人)を抜いて一気に最大派閥の細田派(96人)に次ぐ第2派閥に浮上、岸田派は第4派閥に後退することになる。今のところ、会長には麻生氏が、山東氏が会長代行になる見通しで、ポスト安倍をめぐる総裁選では麻生氏が強い影響力を持つことになり、岸田氏にとってはライバル派閥の誕生になるわけだ。

 岸田派内には、「池田勇人首相が立ち上げたのが名門『宏池会』だ。もともと麻生派も谷垣グループもうちの一員だった。本流は自分たちだ」との思いが根強くあり、麻生氏主導の動きに冷ややかな声が多い。

 何しろ、お公家集団とも揶揄されながらの宏池会の分裂と闘争の歴史にはすさまじいものがある。1998年の宮沢喜一元首相の後継会長をめぐる争いで、加藤紘一元幹事長に敗れた河野洋平元衆院議長とともに宏池会を去ったのが麻生氏だった。

 岸田派と谷垣グループとの抗争も激烈だった。2000年に加藤氏が森喜朗内閣(当時)に反旗を翻した「加藤の乱」で分裂。古賀派時代の08年にいったん合流したが、野党時代の自民党総裁だった谷垣氏が12年の総裁選出馬に意欲を示すと 古賀氏が猛反対し、再び谷垣氏らが離脱した。その古賀氏の指名で後継領袖に就いたのが岸田氏で、古賀氏はいまでも岸田派名誉会長として影響力を行使している。

 こうした過去から、ひとつになるのはなかなか難しい。ただ、その一方で、「将来を考えて麻生氏と連携を深めポスト安倍の足場を固めるべきだ」との声も出てきた。実際、昨年暮れ頃から岸田氏は麻生氏と食事や会合を重ね、分裂前の1998年頃の話に花を咲かせたり、岸田、麻生、谷垣グループの再結集による「大宏池会」構想に関わる話をしたりしてきた。

 麻生氏にとっても、岸田氏への接近にはメリットがある。麻生派には若手議員が多く、将来の総裁候補や重要閣僚、党3役を務められる人材に乏しい。そのため、「麻生後」を考えた場合、岸田氏との協力は欠かせないからだ。

 では、大宏池会が誕生するとすればその条件は何か。

 自民党幹部は「麻生さんと岸田さんの処遇だろう。麻生さんには、祖父の吉田茂元首相の直系の弟子にあたる池田元首相が創設した派閥であり、かつて在籍した宏池会の『会長』就任への意欲があるとされる。また、岸田さんには総理・総裁になりたい思いが強い。その両方を満たすためには、麻生会長、岸田総裁候補というポストが最初から与えられればいいのではないか」と語る。

 麻生派はまず、山東派と谷垣グループの一部との合流に踏み切るわけだが、大宏池会構想をめぐっての派閥の地殻変動はさらに続きそうだ。

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