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霞ヶ関ファイル

金田勝年法相の記者会見 2・28/4・7

テロ等準備罪 2・28

【記者】4月21日に衆議院法務委員会で行われたテロ等準備罪の審議では、一般人が捜査の対象になるかどうかをめぐり、大臣と盛山副大臣の答弁が食い違っているとの指摘がされています。この点について、改めて御説明願えますでしょうか。

【大臣】テロ等準備罪の要件の一つである組織的犯罪集団とは、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺組織など違法行為を目的とする団体に限られ、通常の社会生活を送っている限り、関わり合いを持つとは考えがたい団体です。そのため、通常の社会生活を送っている方々は、このような組織的犯罪集団と関わり合いを持つことはないので、これに関与することも、関与していると疑われることも考えられないと何度も申し上げてきました。

 加えて申し上げると、テロ等準備罪の捜査は、第1に、組織的犯罪集団が関与する犯罪、第2に、一定の重大な犯罪の計画、第3に、その計画に基づく実行準備行為という3点について嫌疑がある場合に行われるものであり、通常の社会生活を送っている方々に、そのような嫌疑が生じることは考えられません。したがって、一般の方々がテロ等準備罪の捜査の対象となることはないと考えています。副大臣の答弁も実質的な違いはないものと考えていますが、副大臣の答弁の詳細については、今後、法務委員会等でしっかりと説明されるものと考えています。

【記者】一般の方が対象になるか、ならないかという話ですが、その嫌疑があるか、ないかというのを判断する段階での「調査」という言葉を使われていましたが、その対象にはなるというお考えですか。

【大臣】私が申し上げたのは嫌疑がなければ捜査は行われないということであり、「調査」という言葉は使っていません。

組織犯罪処罰法改正案 4・7

【大臣】今朝の閣議において、法務省案件として、主意書に対する答弁書が4件ありました。次に技能実習法の施行のための省令等を本日公布したことについて御報告します。まず、技能実習法について、新しい技能実習制度による技能実習生の受入れが本年11月1日から開始されることとなりますが、その施行のために必要となる関係省令等を、本日公布しました。これにより、監理団体の許可や技能実習計画の認定の具体的な基準、具体的な申請手続等が定められるものです。

 また、入管法改正法による在留資格「介護」の新設について、在留資格「介護」による入国・在留が本年9月1日から可能となりますが、その施行のために必要となる関係省令も、本日公布しております。これにより、在留資格「介護」の上陸時の要件や在留期間、具体的な申請手続等が定められるものです。

【記者】テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が6日、審議入りしました。今後、野党からの厳しい追及が予想されます。審議入りに際して、改めて、大臣の意気込みをお聞かせ願えますでしょうか。

【大臣】3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控える中、昨今の国内外のテロ組織による犯罪を含む組織犯罪情勢等に鑑みると、テロ等準備罪を新設し、国際組織犯罪防止条約を締結することは喫緊の課題であると認識しています。

【記者】「テロ等準備罪処罰法案」、この言葉はいつから使われているのでしょうか。また、誰が使い始めたのでしょうか。そして、これは正式な法案名でしょうか。また、これは呼び名なのかをお聞かせ願います。

【大臣】今国会に提出している「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が正式な法案名です。また、これまで「テロ等準備罪」というのは呼称ですと申し上げてきました。このように正式な法案名が非常に長いので、「テロ等準備罪処罰法」という言葉が誰からともなく、徐々に通称として使われているものと思います。

【記者】「テロ等準備罪」は呼称で、「テロ等準備罪処罰法」は通称なのでしょうか。

【大臣】正式な名称がある場合に、それを略したものが通称であると私は申し上げたつもりです。また、「テロ等準備罪」という言葉は罪名を指す呼称として使っていました。

【記者】共謀罪の関係でお伺いします。国際組織犯罪防止条約を締結すればテロの防止に未然に役立つという御説明を当時を含めてされていますが、未然防止に役立つとは具体的に言うと、どのような形で役立つのでしょうか。イメージが湧かないので教えてください。

【大臣】テロ等準備罪の創設によって、テロ組織を含む組織的犯罪集団による犯罪の実行着手前の段階での検挙、処罰が可能になり、こうした犯罪による重大な結果が発生することを未然に防止することができるようになると考えています。

【記者】条約を締結すると国際捜査協力ができるとか、逃亡犯罪人の引渡しについての規定ができるとそういう面を強調されていますが、逃亡犯罪人の引渡しがうまくいくというのは、未然防止とはあまり関係ないような気がします。また、捜査共助がスムーズにいくというのもテロの防止とはあまり関係ないような気がしますが、それがどのようにテロの未然防止に役立つのかを具体的に教えてください。

【大臣】情報収集において、国際社会と緊密に連携することで、テロの未然防止につながるということもそこに加えられるのではないかと思います。

【記者】情報というのはどういった情報でしょうか。

【大臣】テロ組織に関連する情報などです。

【記者】例えば、テロ組織のメンバーが日本に入ってきたとか、そういう話ですか。

【大臣】条約の中での議論では、いろいろなケースが想定されたと思いますが、それらについては、外務省の方が承知していることかもしれません。そういった細かい側面については、私の方から申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

【記者】具体的にイメージもないのに条約を締結すればテロの未然防止をすることができるとおっしゃっているのでしょうか。

【大臣】違います。

【記者】じゃあ具体的なイメージをちょっとだけでもお聞かせください。

【大臣】様々なケースが考えられます。しかし、この場で一概に申し上げるのは難しいということです。


【記者コラム】国際基準無視し重箱の隅つつく

 マスコミの記者の役割の1つは、権力による人権侵害を防ぐことだ。したがって、立法行為を厳しく監視するのは当然である。しかし、テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案についての対応はお粗末すぎる。大臣答弁の稚拙さも問題ではあるが、テロへの備えの国際標準を無視して、重箱の隅をつつくような質問を続ける記者たちは人権を守るどころか、結果としてテロの危険性を高めて、国民の生命を脅かすものでしかない。

 同法改正案について、未然防止に役立つ「イメージが湧かない」との抽象的な質問や、テロ等準備罪は「呼称か」など、さまつな質問を繰り返す記者を見ると、3年前の児童ポルノ禁止法改正を思い出す。

 児童ポルノの「単純所持」を禁止する規定を盛り込むための同法改正は2014年に実現した。しかし、所持を禁ずれば、えん罪による人権侵害が横行するなどと、当時の民主党やマスコミが強く反対し、長く議論が進まなかった経緯がある。

 わが国で、児童ポルノ禁止法が成立したのは1999年。その当時から、所持禁止規定がないことは国際社会から批判されていた。同規定がなかったのは先進7カ国(G7)の中では、日本だけだったからだ。

 つまり、児童ポルノの製造・販売を禁じても、所持を禁じなければ需要を断つことができず供給も撲滅できない。だから、所持を禁じるのは国際基準だったのだ。所持を禁じる法改正は実現したが、それによってマスコミが懸念した人権侵害はまったく問題になっていない。

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結国は187カ国に上る。しかし、3年後に五輪を控えてテロの標的になる懸念が高まる中、先進国日本が条約締結の条件となるテロ等準備罪を新設できないのは、テロに対する危機意識において、いかに国際基準からずれているかの証左であろう。それを象徴しているのが記者たちである。

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