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藤井浩人・美濃加茂市市長の収賄容疑

二審有罪と一転

 岐阜県美濃加茂市収賄事件で藤井浩人市長に対し、一審は無罪。しかし、二審はこのほど、有罪判決を出した。判決では懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円だった。

 この収賄事件は2014年6月24日に、藤井氏が市議時代に自身の出身中学校への雨水濾過機設置に便宜を図った見返りに、名古屋市北区の浄水設備業者「水源」社長の中林正善氏から現金30万円を2回に分けて受け取った疑いがあるとして、愛知県警・岐阜県警による合同捜査本部が事前収賄容疑などにより藤井を逮捕したことに始まる。

 しかも市長から、自白の強要があった事が明かされるなど、捜査手法の問題点も浮上している。市長はジャーナリストの江川紹子氏の取材に対し、(警察の取り調べを受けた際)「はな垂れ小僧に投票した市民は何を考えていたんだ」「早くしゃべらないと、美濃加茂市を焼け野原にするぞ」と言われた。そうした中で、事件の参考人として取調べを受けていた同市税務課長が自殺するなど、同事件の闇は結構、深い。

 この裁判の焦点は、30万円の賄賂を市長に渡したと供述した中林社長の信憑性にある。

 弁護側は、供述の信用性に疑義があり、意図的な虚偽供述と主張した。

 そもそも中林氏は、4億円もの融資詐欺を行なうような人物だ。それも売り上げがないのに、あるように装った公文書偽造で、銀行から金を借りるという融資詐欺だった。

 その弱みがある中林氏は、検察と闇取引し「意図的な虚偽供述」をした可能性があったというのが弁護側の見解だ。

 極めて悪質な公文書偽造をへっちゃらにできる男なら、虚偽供述するくらい何でもない。何より中林氏と市長の席に同席した者が「現金授受を見ていない。席もはずしていない」と証言しているのだ。

 その一審判決は無罪だった。通常、一審判決は大きな意味を持つ。

 中林証言の信用性を否定した一審判決の内容は以下の通りだった。

 中林証言が贈賄の唯一の証拠であり、その公判供述は全体として具体的かつ詳細であり、不合理な内容も見当たらない。

 しかし、捜査段階における供述経過、記憶喚起の経過といった重要な事実に関して説明に変遷があり、不自然。何より金融機関を相手に数億円の融資詐欺を行うことができる能力を有する人間には、法廷での体裁を整えた供述は困難ではない。

 融資詐欺に関してなるべく軽い処分を受けるため、捜査機関に迎合し少なくともその意向に沿う行動に出ることは十分にありうる。よって中林証言の信憑性には疑問があるというものだ。

 その判決を勝ち取る経過の中で藤井氏側は、審議の経過を逐一、情報発信していった。

 一般の裁判では、その中身を発信することはほとんどないが、市政を担う者として、判決が出る前に、政治的に追い込まれてしまうことを懸念したためだ。

 積極的な情報発信で、どんな判決が出ようと、歴史の証人として真実を残しておく必要があった。それはがけっぷちでの情報発信だった。

 その情報発信で「市民はいかに事件がおかしいか理解した」と藤井市長は語る。

 それで昨年12月に辞職し、市民の信を問うことにした。

 1月末の出直し選挙では、投票者の8割が支持してくれ、圧勝した。美濃加茂市の市民は市長に信任票を投じてくれたのだ。

 しかし、二審で有罪判決が出た。

 「無罪を確信する中での有罪判決だったから衝撃だった」と市長は正直に回想する。だから、判決をなかなか受け入れられないこともあったと言う。

 ただ時間が経つにつれ、これが現実なのだという思いにとらわれていったこともあるという。

 公職選挙法の規定で藤井氏の任期は今年6月1日まで。在任中に最高裁で2審判決が確定した場合は失職し、改めて市長選が実施される。執行猶予期間中、藤井氏は公民権が停止されるため、立候補はできない。

 ただ、市長逮捕の金額としては30万円の収賄容疑というのは、いかにも低い。一桁違うのではと思うぐらいだ。

 役人なら10万円程度でも、血祭りにあげられることは少なくないが、通常、市長クラスなら100万円以上というのが普通だ。

 これに対し弁護士の郷原信郎氏は「ただ、これをいうと、事件の本質を見誤るから言わない」と言う。

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