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今月の永田町

改造内閣、改憲に向け強力布陣へ

 安倍晋三首相は8月3日を軸に、第3次安倍再々改造内閣を発足させ、自民党新役員人事もあわせて断行することを決めた。その背景には、通常国会で森友・加計学園に絡む疑惑などに関して野党の追及に政権側が防戦一方となり、国政選挙並みに注目された7月2日投開票の東京都議選でも惨敗し内閣支持率の低落傾向を早々に挽回したいとの思惑があるからだ。秋の臨時国会では心機一転して憲法改正に取り組むことのできる強力な布陣を敷きたいとの思いもあろう。しかし、党内から首相の強引な政治手法に批判的な声も出てきており、政権運営は厳しさを増している。


 「当初は8月下旬に内閣改造を行う予定だったが、秋の臨時国会で憲法改正の議論を本格化させたい首相の思い入れや、都議選敗北から早急に立ち直るためにも上旬に早まった。改造の規模は大幅になりそうだ」と自民党幹部は語った。

 今年の通常国会は、政府提出のいわゆる「テロ等準備罪法」成立に向けての金田勝年法相の不安定な答弁や、南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)に関する稲田朋美防衛相の答弁などがチグハグで政権へのマイナス影響が目立った。加えて、安倍首相の昭恵夫人らが絡む森友学園疑惑や、加計学園の許認可問題で、首相はじめ側近らが執拗に追及されるなど守勢から脱することができなかった。

 そのため、内閣を改造することは規定路線だったが、それが早まった背景には、都議選の真っ最中にメディアに繰り返し報道された豊田真由子衆院議員が秘書に浴びせた暴言問題、稲田防衛相による自衛隊の選挙応援発言、下村博文幹事長代行(都連会長)の加計に絡む献金疑惑などにより、内閣のイメージがさらに悪化し、都議選で自民党がかつてない惨敗を喫したことがある。

 では、新たな顔触れはどうなるのか。目玉候補は誰か。

 自民党本部職員はこう語る。

 「麻生太郎副総理・財務相と菅義偉官房長官の留任、金田、稲田両氏の交代はマスコミ辞令通りだろう。最大の注目点は、ポスト安倍の最有力候補の一人の岸田(文雄)外相と、二階(俊博)幹事長のポストに動きがあるのかどうかではないか。都議選結果の出た2日夜に首相と食事をした盟友の甘利明(元経済産業担当相)の重要ポスト復活も間違いない。ダークホースでは、小泉進次郎と大阪の橋下徹の起用があるかもしれない」

 この発言をもとに分析していくと、来年9月の自民党総裁再選と憲法改正を意識した人事構想に着手している可能性のあることが分かる。

 岸田外相の移動に関しては、基本的に本人の意向を踏まえて判断するとみられるが、首相としては総裁選の対抗馬として早々と野に放ちたくはない。一方の岸田氏としても禅譲狙いなので外相ポストにとどまり、おとなしくしていたい。しかし、総裁選を勝ち上がるための近道は党務を掌握する幹事長ポストの就任であることは間違いない。安倍再選支持を公言してはばからず党内に睨みのきく二階幹事長ではあるが、「高齢で雰囲気が暗く再生自民党のイメージが沸いてこない」(自民党職員)のも確か。そのため、岸田幹事長説が浮上してくる。それを首相が認めるのか否かが注目される。首相の腹心の一人で、献金疑惑で昨年1月に閣僚を辞任した甘利氏の閣内復帰は難しいだろう。だが、政策通であるだけに、党政調会長ポストの起用ならあり得よう。

 また、清新さをアピールするのに最適なのが小泉進次郎氏だ。農水部会で活躍し、人気の高い小泉氏を農水相に抜てきすることは内閣支持率のアップに直結する。問題は、それが分かっている小泉氏本人が応えるか否かだろう。

 実現すれば仰天人事となるのが、橋下徹氏を閣内に取り込むことだ。自民党中堅は「先の国会でも明らかになったように、維新は是々非々の姿勢で国会に臨むとは言いながらも与党化している。憲法改正の発議のために衆参それぞれの院で3分の2以上の賛成議席が必要なので維新が味方になれば心強い。公職から外れている橋下なら閣内に入りやすいだろう。内閣府に特命の憲法改正担当大臣を新設して首相の本気度を示すことが狙い」と語るのだ。

 さらに女性閣僚として、三原じゅん子氏の起用や答弁に手堅さのある高市早苗総務相の重要閣僚ポストへの移動もあり得る。「高市はもともと経済が専門なので経済再生相か。安倍後継から脱落した稲田に代わり外相に起用し、総理後継レース候補者に顔を出すことも考えられる」(同中堅)という。

 いずれにせよ、首相にとって政権運営の舵取りはかつてなく厳しいものになっていく見通しだ。岸田氏とともにポスト安倍をうかがう石破茂前地方創生担当相は、都議選の敗因について「自民党が野党時代に確認した原点を忘れてしまっている。国民目線から離れている今の政治ではいけない」と安倍氏の政治姿勢を露骨に批判。憲法9条の改正案を新たに作るという首相の提案に対しても「われわれが野党時代につくった改憲案があるではないか」と強調し、首相の改憲への道筋に待ったを掛けているのだ。そうした声が「お友達優遇人事ではダメだ」といった批判とともに増える可能性は否定できないからだ。

 また、連立を組む公明党との協力関係も微妙である。都議選では自民党と手を切り、小池百合子氏の「都民ファーストの会」と協力して戦った。「惨敗に追い込まれた自民としては許しがたい裏切り行為」(党職員)と映っている。それに対する配慮すらなく、都議選後、山口那津男代表は「憲法改正は政権のスケジュールにはない」と首相に早くもブレーキを掛けている。

 人事刷新を機に新政権は上昇気流に乗れるのか。首相の手腕がかつてなく問われている。

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