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問われる政治家の品格

正されるべき地元選挙民の見識

 埼玉4区選出の豊田真由子衆院議員(42)が秘書に暴力を振るい、暴言を浴びせた責任を取り自民党に離党届を出した。

 テープから流れてくるのは、聞くに堪えない罵声だった。「死ねば。生きる価値がない」等々、国会議員としてというより、一社会人として問題だ。私たちは、こんな人が議員をしている深刻な現状をまず厳しく認識すべきだろう。

 先日辞めたという豊田氏の秘書が録音テープを「週刊新潮」に提供し、同誌が報じたものだ。それによれば、この秘書はハンガーでたたかれるといった暴行も受けたという。

 確かに日本の政界では議員と秘書の間の明確な上下関係が今も目立つ。だが、民間企業でもパワハラに対する目は厳しくなっている。当然の社会の潮流だ。

 ところがそれをまるで知らないかのような振るまいだ。厚生労働省の官僚出身で、社会的弱者への視点が不可欠な社会保障政策を主なテーマとしている議員とは思えない。

 今回、自民党が豊田氏の処分を急いだ理由は明白だ。「加計学園」問題などにより、ただでさえ安倍晋三内閣の支持率は急落している。東京都議選を控え、さらなる悪影響を最小限に抑えるためだろう。

 ただし、こうしたことは何度も見てきた光景だ。

 豊田氏は自民党が政権を奪還した2012年の衆院選で初当選し、現在2期目だ。大量に当選した自民党の同期議員には、金銭トラブルで離党した武藤貴也氏、不倫疑惑で議員辞職した宮崎謙介氏、女性問題で離党した中川俊直氏らがいる。

 ほかにも失言や不祥事で批判を受けた議員は多く、かねて「自民党の2012年問題」と言われてきたほどだ。きちんと候補者選びをしてきたのか、やはり疑問が募る。

 加えて豊田氏らは2度当選したことで「当選したのは自分の力だ」といったおごりを生んだ可能性もある。もはや組織的な問題ととらえるべきで、党として若手議員の再教育を本格的に実施すべきだろう。

 安倍政権では最近、問題を起こした閣僚らへの対応が総じて甘くなっている。これがモラルの低下を招いているのだとすれば、考え直す必要がある。

 何より考慮すべきは現在の選挙制度かも知れない。

 上記の武藤貴也氏(滋賀4区)や宮崎謙介氏(京都3区)、それに中川俊直氏(広島4区)にしても、地元選挙区の住民は薄々、そうした行状は知っていたはずだ。それでも表向きの肩書や出身大学の威光に押されて投票したとするなら選挙民も選挙民だ。

 大臣が不祥事を起こせば、首相はその任命責任から逃れられないのと同様、議員が不祥事を起こすとき、選出した選挙区の人々の見識も問われなければならない。

 何よりトランプ米大統領の誕生や、フランス総選挙で見られたように、選挙の構図が土台からがらりと変わるような時代を迎え、風向き一つで選挙結果を左右しかねない状況がある。

 近年にも「自民党をぶっ壊す」とのワンフレーズで大きな風を起こした小泉純一郎氏や「政権交代」を掲げた民主党の政権奪取など、単純なスローガン政治が政治状況の転換を促した歴史がある。

 だが、そのどちらもひどい政治停滞をもたらした経緯がある。その意味でも、政治を劇場化させない仕組みが問われている。

 何より安定した日本の社会の重し役でもあった中間層が薄くなり、格差社会へと突入している中で、時の風だけで突き動かされることのない選挙制度の構築が急がれる。

 83人いた小泉チルドレンは、4年後の総選挙で再選されたのはわずか10人にすぎない。また、09年の総選挙で初当選した民主党議員は143人に上ったが、12年の総選挙で再選されたのはわずか11人でしかない。

 1つの選挙区から1人しか当選しない小選挙区制にしても、中選挙区制度に比べ選挙区の面積が小さくなったというだけではなく、「死票が多くなってしまう」というデメリットがある。何より複数の当選者を出す中選挙区が派閥政治を作りだしたのは事実だが、派閥政治は同時に政策をじっくり研究する機会を提供し議員の切磋琢磨を促し、議員を育成した実績がある。

 いずれにしても、政治家は政策立案能力と結果を出す力が求められる。その選出には一方的な立会演説だけでなく、米大統領選挙でのテレビ討論のような政治家としての力量が判断できる場も必要だ。

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