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鳴かず飛ばず 石原伸晃経済再生相

まずは安全保障の基本から勉強し直す謙虚さが必要に

 年初、民進党の野田佳彦幹事長は「(民進党は)もう背水の陣ではない。すでに我々は水中に沈んでいる。そこからどうやって浮き上がるかという覚悟が問われる」と述べた。これには民進党の支持者のみならず、多くの有権者が「その通り!」とうなずいたものだ。

 ただ、永田町の池に沈んでいるのは何も民進党だけではない。

 自民党の石原伸晃経済再生担当相も鳴かず飛ばずの状態だ。かつては総裁選に出馬するほどの勢いもあり支持者もいたが、昨今、まったく存在感が感じられなくなった。

 それどころか、自ら墓穴を掘るような失態が続いている。

 7月2日の東京都議選では、小池百合子都知事率いる「都民ファースト」の大勝を許した。そもそも小池氏に政治的ジャンプボードを提供し、古巣への決別を決心させたのは石原氏だった。

 昨年6月に小池氏が都知事選に手を挙げた際、自民党都連会長だった石原氏はこれに「相談がない」と激怒。さらに石原氏は「党所属議員には、親族を含めて(自民党推薦の)増田氏以外を支援すれば除名処分を行う」といった内容の文書を配ったと言われている。

 石原氏と小池氏に個人的確執があるのは誰もが知るところだが、政治家である以上、私情を超えて大局から政治状況を見て判断しないと、とんでもない結果を招く。

 結局、敵を作っては、それに突進し応援団を増やしていく小池氏の政治手法にまんまと引っかかったと言える。

 石原氏は3年前の環境相時代、福島第一原発事故の除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設建設をめぐり、「最後は金目(かねめ)でしょ」と語って顰蹙を買ったことがある。石原氏の発言は、最後は相手の頬を札束で叩くような印象を与えたことで大きなダメージとなった。

 さらに自民党幹事長だった時には、福島第一原発を「第一サティアン」と呼び、地元の反発を招いてもいる。「サティアン」はオウム真理教が教団関連施設の呼称に使用したもので、これも配慮を欠いた発言だった。

 ネットでは「国宝級失言大臣」との異名が出るほどだが、石原氏の大臣としての基本見識が問われたのが5年前の9月11日、テレビ朝日「報道ステーション」での古舘氏とのやりとりだ。

 この時は、尖閣諸島国有化問題がテーマになっていた。

石原「そりゃ日本の領土なんだから。国が、そこで暮らす漁民のために、あるいは公海を航海する船のために、あの辺の島をですよ、しっかりと領土を保全して、守って、平和利用していけばいいじゃないですか」

古舘「きちっと守って平和利用した暁に中国がどういうふうに攻めてくるか。仮に攻めてきた時の対策は」

石原「攻めてきませんよー。誰も住んでないんだから」

古舘「来ないと言い切れますか」

石原「それはもちろん周りには来ますよ。あそこは良い漁場ですから」

 どうやら石原氏は中国が南シナ海で、フィリピンやベトナムなどが領有権を主張する無人島や岩礁を武力で奪取していることをご存知なかったらしい。

 政治の眼目は、まず「国家の安全と自由」を担保することだ。中国の強権台頭、北朝鮮の核・ミサイル開発で東アジアの安全保障が大きく揺さぶられている中で、閣僚級の政治家にこの程度の認識しかないというのは心細い限りと言えよう。

 石原氏は年初、「自分も若い、若いと思っていましたが、60歳になる今年は、人を育てていく年にしていきたい」と語っている。しかし、まずは自らが安全保障の基本問題から勉強し直す謙虚さが必要かもしれない。

 永田町で還暦を迎える年男には、石破茂氏に岸田文雄氏、それに中谷元氏といった錚々たる政治家がいる。こうした重鎮に負けないよう、一派閥を率いる石原氏の健闘を祈りたい。

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