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今月の永田町

自公大勝で改憲勢力8割 発議条項絞り込みへ

 特別国会が11月1日に開催され、安倍晋三首相が第98代の首相に指名された。それを受けて安倍首相は全閣僚を再任させた第4次内閣を発足させた。会期は与野党対立の結果、12月9日までとなり、所信表明演説は11月17日の予定だ。首相は、トランプ米大統領の5日の来日および日米首脳会談をはじめベトナム訪問などの外遊日程をこなしながら国内の重要諸課題に取り組むことになる。


対決準備遅れる野党

 第4次内閣の発足は、5次にわたって組閣した吉田茂元首相に続く戦後2例目で、明治時代の初代首相・伊藤博文に並んで歴代2位となった。今回の衆院選の自民圧勝で、来年9月の自民党総裁選で3選される可能性が大きくなったが、仮に再選されれば在職日数も歴代2位(7年8カ月)の佐藤栄作や1位(7年11カ月)の桂太郎を抜いて単独1位となり、大宰相の仲間入りをすることになる。

 組閣後の1日夜9時過ぎからの記者会見で首相は、「謙虚な姿勢で自公の強固な安定した連立基盤の上に真摯な政権運営に当たる」と強調した。衆院選で自民284議席、公明29議席の計313議席を獲得。憲法改正の国会発議に必要な3分の2である310議席を上回る大勝だった。野党も合わせると総定数の8割が改憲勢力となった。

 それだけに、「謙虚な姿勢」を強調して身を引き締め、首相が政治家になる原点とし、改革の本丸と位置付ける憲法改正に、いよいよ本格的に踏み出す覚悟を示したものと言えよう。

 首相は会見でまず、経済最優先を強調。「生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かう」との考えから2017年度補正予算案の編成を指示した。少子高齢化対策は首相が解散総選挙を断行する際、北朝鮮の脅威とともに「国難」と位置付けたものだ。

 北朝鮮に関して、戦後最高のレベルの脅威と見なす首相は、11月6日に行われたトランプ大統領との日米首脳会談で、緊密な日米同盟関係をさらに深化させた。対北軍事攻撃をオプションに持つ米国の大統領が、拉致被害者家族とも会談して救出依頼を受けたが、日米間でどう対処していくか「重大な岐路に立つ歴史的な会談」(自民党幹部)になった。

 また、会談では「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向け日米が連携する方針を確認。シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国に対処するための方策を議論し合った。通商政策も協議、両首脳は2国間の貿易、投資の活性化に関し緊密に議論を重ねることで一致した。「首相にとってもトランプさんにとっても、アジア太平洋地域の国々にとっても極めて意義深い会談になった」(与党中堅幹部)のは間違いない。

 その上で首相は、ベトナムで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議やそこでの米、中、露首脳会談、フィリピン訪問を予定している。今月の上中旬は外交案件が目白押しの状態だ。そのため、政府与党は当初、特別国会の会期を8日間とし、改めて臨時国会を召集することを模索していた。ところが、野党側はそんなことはおかまいなしに、大幅な会期を要求。「国民におごりと取られる」と判断した与党サイドが歩み寄って39日間となったのである。

 「しかし、野党は会期を大幅にして何をしたいのか。まさか森友・加計問題で大騒ぎをしようと考えているわけではあるまい。そもそもそれができる態勢はできているのか」と首を傾げるのは与党関係者だ。何しろ、野党側は組織づくりのために今月は大忙しのはずだからである。

 野党第一党だった民進党が、衆院選で希望の党、立憲民主党、無所属の会に3分裂。民進党は10月31日の両院議員総会で代表を辞任した前原誠司氏の後任として大塚耕平参院議員を選出した。大塚代表の最初の仕事は、新執行部をつくることだ。保守とリベラル議員が混在し、幹事長も政調会長も決まっていない。事務局も寂しい限りだ。この態勢で政府との論戦を準備しなければならないのである。

 希望の党も、小池百合子代表と共同で代表を務める国会議員がまだ決まっていない。代表選の告示は8日、決戦は10日、という段取りで、憲法、安保法制に対する見解が相反する候補者同士の争いになると見られている。仮に、反安保法制の議員が当選すれば小池代表との関係は決裂するだろうし、敗北すれば離党する動きが出ないとも限らない。そんな党内抗争をしていて国会が疎かにならないか。

 唯一、野党第一党として戦後最低の55議席に終わった枝野幸男代表率いる立憲民主党は安倍政権との戦闘モードを高めている。民進党内左派出身で、選挙戦では共産党の力を借りて勝ち上がったグループである。森友・加計問題は終わっていない、との立場から関係者の証人喚問を求める声をさらに強める方針だ。

 今国会でもう一つ焦点になるのが、憲法改正に向けた動きである。核・ミサイル実験を続け、日本を恫喝して止まない北朝鮮による脅威に対して、安保法制に基づき米国との防衛態勢の強化を図るとともに、自衛隊の役割を拡大していかねばならない。首相はそのためにも憲法9条に自衛隊を明記したい考えなのだ。首相は「与党、野党にかかわらず、幅広い合意形成に努力する」との意向を明確にしたが、改憲政党である自民、公明、希望、維新の与野党で前進を図ることになりそうだ。

 早くも野党・希望の党は憲法審査会に、改憲派議員で自衛隊の9条明記を肯定する細野豪志氏や長島昭久氏らを参加させる考えを示している。自民党としては年内に改憲案を審査会に提出する予定となっている。問題の作業は、憲法のどの条項を発議するかを絞り込むことである。改憲原案の作成に向けた新たな段階に入れるか注目される。

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