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北方領土返還 疑問増す安倍氏のアプローチ

初の空路墓参もロシア主導

 北方領土の元島民らが今秋、国後、択捉両島への初の空路墓参を行った。政府は今後、空路墓参の定例化を目指すなど、北方領土での日露協力の実績を積み重ねて領土交渉を進展させたい考えだ。しかし、ロシアのプーチン大統領と安倍晋三首相との間で合意した北方四島での「共同経済活動」は、双方の主権を害さない「特別な制度」の下で行われるはずだが、ロシア側は無視している。このため、安倍首相の対露アプローチに疑問の声が増している。


 安倍首相にとって今秋最大の外交日程は、トランプ米大統領の来日とベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でのプーチン大統領との会談だった。特に、プーチン大統領とは20回目の直接会談となり、北朝鮮問題だけでなく北方領土返還問題も必ず、テーブルの上に上げられるテーマなのだ。

 首相としては、6月に予定されながら天候が原因で延期されていた初の空路墓参が実現したことに謝意を示し、今後も続けて空路墓参が可能となるよう申し入れることになろう。だが、「問題なのは、わが国の領土の主権を主張できないことだ。ロシア側の航空管制規則に従うことは北方四島の管轄権がロシアにあることを認めてしまったことになる」と政府関係者は指摘する。そのうえで、同関係者は「すべての点でロシア主導となっており、首相による新たなアプローチは国益に反しているのではないか」と疑問視した。

 例えば、北方四島での「共同経済活動」の進め方がそうだ。

 安倍首相とプーチン大統領は9月7日、ウラジオストクでの首脳会談で、「共同経済活動」の実現に向け、優先分野として①海産物養殖②温室野菜栽培③観光ツアー④風力発電⑤ゴミの減量対策─の5分野で合意し、10月に現地調査を行うことになった。これらは、ロシアと日本双方の法的立場を害さない「特別な制度」の下で行うとしているが、ロシアはその直前に、北方領土の色丹島にロシアの法規制の及ぶ経済特区を設置してしまった。

 そればかりでない。極東地域を統括するトルトネフ副首相は、優先5分野について日本側に対して2カ月以内に具体化するよう求め、その後は、他の特区同様、ロシアや全世界で投資家を探す、と語ったのである。他国まで絡めて開発をしていこうという勝手なやり方では、日本は経済投資を利用されるだけで、肝心の北方領土返還につながる道筋を描くことはできない。北海道を射程に入れた軍事基地化も進めている。

 抗議の意思を表立って示さない首相の〝戦略的忍耐〟ではなく、〝戦略的主張〟をしっかりと行っていくべきだろう。

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