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今月の永田町

3月「竹下派」に衣替え 総裁選に絡み額賀降ろし

 自民党額賀派が3月に「竹下派」に衣替えすることになった。現会長の額賀福志郎氏(74)は新設の名誉会長に退き、竹下亘・党総務会長(71)が後継会となる方向だ。お家の分裂騒動はひとまず決着することになったが、9月の総裁選に向けて再び「戦う集団」に脱皮できるのか、一致結束してどう臨むのか。他派閥からも真剣な視線が注がれている。


「戦う集団」へ再結束

 自民党第三派閥の額賀派(55人)が今年に入って分裂騒動に見舞われた。1月25日の派閥の会合に全参院議員(21人)が欠席し、額賀会長の退任を求めたのだ。その首謀者が吉田博美参院幹事長(68)で、退任しなければ集団離脱も辞さないとの強硬手段に出た。吉田氏ら参院側全員は2月1日の派閥会合も欠席した。

 「吉田さんがここまで強硬に出れるのは、背後にかつて『参院のドン』と呼ばれた青木幹雄元参院議員会長がいるからだ。83歳になったが、隠然たる影響力を持ち、唐突にも見える実力行使となったのだ」と自民党若手は解説する。

 竹下登、小渕恵三(元首相)時代の「血塗られたクーデター」による分裂劇や「戦う集団」としての猛者振りを知悉しているのが青木氏だ。キングメーカーとして君臨した田中角栄元首相率いる田中派を、竹下元首相が経世会を旗揚げして乗っ取った。佐藤栄作首相退陣による1972年の総裁選では、田中氏はライバルの福田赳夫元首相を決選投票の末に退けた。佐藤派領袖の佐藤氏は兄岸信介の派閥を引き継いでいた福田氏を推したが、佐藤派所属の田中氏は総裁選前から派内で多数派工作を画策して3分の2を握って田中派を結成して分裂した。いわゆる角福戦争だ。

 その田中派は最大派閥に躍進し、「数の力」と「鉄の結束」で影響力を行使した。だが、田中派の血を引く歴代首相は竹下、羽田孜、橋本龍太郎、小渕止まりだ。

 「ポストが取れない。首相候補もいない。9年も派閥の領袖を務めながら総裁候補も出せないのはおかしい」というのが陰の主役・青木氏の実感だろう。2年ほど前から、額賀氏本人に会長退任を迫ってきたが、その都度、額賀氏は決められず決断を先延ばししてきた。赤坂の小料理屋で全国紙のベテラン記者から「額賀さんの時代が来る。打って出たらいい」とのアドバイスも受けたが、乗ってこなかったという。

 吉田氏の決断に刺激された同派の衆院当選3回の若手議員も1月29日に都内で会合を開き、派の分裂を回避するには「会長交代もやむを得ない」との認識で一致。額賀会長ら派閥の執行部は2月7日夜に、赤坂の日本料理店で当選4回以上の衆院議員を対象に、退任を巡って最終的な意見聴取をした。

 これを受けて額賀氏は翌8日に、自身に退任要求を突き付けた参院議員団トップの吉田党参院幹事長と会談し、3月14日の派閥パーティーまで額賀氏が会長を務めることを確認、新体制について協議に入ることで一致したのである。また、派閥例会のボイコットを続ける吉田氏は国会内で記者団に「互いに今後の方向性について理解し合った。パーティーに向け、全会一致で頑張っていく」と表明。参院議員団はその後の例会に出席することになった。

 派内では、額賀氏の後任会長に竹下元首相の弟の竹下亘副会長(党総務会長)が昇格し、同じく副会長の茂木敏充経済再生担当相が会長代行に格上げされるものと見られている。「ここで注目されるのが、単なる顔のすげ替えだけではあるまい」(自民若手)ということだ。額賀氏への不満の源流には、「多くの派閥の仲間を落選させてきた」との恨み節だけでなく、「次期総裁選を主戦論で臨みたい」とのマグマのような思いが鬱積しているからだ。

 すでに安倍3選の支持表明をしている額賀氏とは違い、竹下氏は反主流の石破茂元幹事長と近い。ここが今後の総裁選のプロセスに影響を与える可能性があるのだ。

 竹下氏は昨年11月の石破氏を励ます会で「首相の資格としては十分どころか、十分以上の内容を持っている」と石破氏を持ち上げた。そればかりでない。「石破派が『やるぞ』と腹を固める時期はどこだろうなと、じっくり拝見させていただいている」と語り、石破出馬に期待感を示したのである。今後、石破派と「竹下派」が急接近する可能性は大いにあるだろう。

 こうした動きを見た他派閥も、活発な動きを見せ始めた。最大の総裁派閥である細田派(94人)は7日夜に、同時刻に額賀派が意見聴取していたのを横目に第4派閥(46人)で安倍首相の禅譲を期待する岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会)に呼び掛けて中堅議員による総裁選に関する意見交換会を開いた。岸田派では、若手を中心に岸田氏が総裁選に出馬すべきとの声も多く、首相サイドにとっては気掛かりなところだ。

 また、石原派(12人)と谷垣禎一前幹事長が特別顧問を務める谷垣グループ(約20人)の幹部も同日夜の会談で、3月に合同勉強会を開くことを決めた。石原派の石原伸晃会長は幹事長だった2012年に、当時総裁だった谷垣氏が再選に意欲を示していた総裁選に出馬してしまい、「裏切り」と谷垣グループから見なされた。しかし、勉強会を開始することにより「過去を水に流したい」との幹部の発言もあり、今後、総裁選を念頭に将来的な合流を視野に入れて連携を強化する見通しだ。

 現状では、安倍3選は確実と見られている。ただ、総裁選には国会議員票だけでなく地方(都道府県)の300票も加算される。前々回の2012年の総裁選で、石破氏は安倍首相に対して165票対87票とダブルの大差で勝利している。次回の総裁選は党則改定により地方票の重みがさらに加わることになるため、首相にとって油断できないのが実情だ。このため、今後、総裁選を巡る各派の動きはますます激しくなろう。

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