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ペマ・ギャルポのアジア時評

爪を隠すどころか牙をむく中国

 習近平国家主席の中国は、残念ながら時代に逆行するような行動を展開している。ウィグル自治区の国境では、他国からテロリストの侵入を阻止するため壁を建築し始めている。海外に留学中の学生の両親や兄弟がパスポート申請したというだけで、当局に数カ月も拘束されて、再教育、つまり洗脳教育を押し付けられている。

 チベットのカンゼ蔵族自治州にあるラルン・ガ寺院は現在、四川省の管轄下に置かれている。鄧小平の緩和政策に伴い発展発達した寺院で、常住僧侶、尼僧の数は数万人を超えた。チベット人以外に中国人や華橋、華人の子女の入門者も増え続けてきた。純粋に仏教の修行に徹していたので、長年当局も黙認していた経緯がある。

 その結果、入門者が増え、いつの間にか世界最大規模の寺院になった。

 中国政府は、以前からチベット全土でダライ・ラマ法王の写真を禁止したり、僧侶になるには年齢制限を設けたりしていたが、四川省や青梅省のチベットの領域の現場では多少、見て見ぬふりをする幹部もいたようだ。

 また、チベットの高僧が、中国の上海や天津などの大都会でする布教活動を取り締まることはほとんどなく、信者も増えていった実情がある。

 北京政府の命令で2016年に、強制的にブルトーザーで尼僧や外国人の僧房や寮を破壊し、約5000人を追放した。そして、昨年末から共産党員幹部90数名と工作員を含めた200名が、寺院の教育方針を策定するだけでなく、運営管理も行なうようになった。例えば、教材の選択や入門試験の面接、経理、運営を直接行なうことになった。

 勿論、以前から監視、監督のための委員会があり、間接的に共産党が監視はしていたが、今回のように直接運営に関わったことはこれまでなかったことだ。

 海外の人権団体や亡命チベット人は抗議集会を世界各地で実施したが、中国は無視したままだ。

 逆に、外国資本のホテルや飛行機の機内食などの宣伝媒体に文句を付け、チベットの文化的アイデンティティに関した記事や表現、地図に対して撤去を求めている。

 シニア・ブッシュ大統領など歴代のアメリカ大統領は訪中する度に中国に対し、人権問題、言論、信仰の自由を尊重するよう注文を付けて来たが、残念ながらトランプ大統領は、自由や民主主義についての言及はみられなかった。これが中国に間違ったメッセージを与えているのかもしれない。

 北朝鮮に振り回されているトランプ大統領のアメリカが迷走している間に、中国はますます暴走しているようにも見える。

 信仰、思想、表現の自由などの普遍的価値も、ご都合主義の犠牲になり、「能ある鷹は爪を隠す」とばかりに鄧小平時代は─韜光養晦(とうこうようかい)路線がとられたが、昨今は爪を隠すどころか牙をむくようになってきた。

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