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2011.10.24

脇の甘さと危機管理欠如

 旧大蔵省を退官後、衆議院選初当選したのは平成12年。新人議員ではあるまいに、法相の秘書官に有罪判決を受けた経歴を持つ人物を任命するとは、脇の甘さにもほどがある。

 辞任した秘書官は、9月1日に公設第1秘書となり、大臣就任にともない、2日に秘書官に任命されている。普通なら、長年政治活動を支えてきた政策秘書などを秘書官にするものだが、平岡法相はなぜか、そうしなかった。しかも、有罪判決を受けていた事実は、秘書官が雑誌の取材を受け、初めて報告されたという。側近の“身体検査”も十分できないというのでは、法相としての資質に疑問符が付く。

 加えて、事実の把握から「けじめ」までに、半月もかかっている。10月7日の会見では「詳しい事実関係を調査して(処遇を)検討する」と答えたが、記者の間からは「事実がはっきりしているのに、これ以上何を調査するというのか」と、ため息が漏れていた。

 有罪判決を受けたとは言え、秘書官の場合、執行猶予期間が過ぎているのだから、公務員の欠格事由には当たらない。弁護士資格を持つ法相には、そうした法律上の知識はあっても、法相の秘書官には、有罪判決を受けた人物は相応しくないという世間の常識に乏しかったのではないか。それが「けじめ」までに時間がかかり、危機管理意識の薄さを路程させる結果を招いたのだろう。

2011.10.24

選挙制度改革の本気度を疑う

 衆院の選挙制度改革に関する与野党協議がスタートした。最高裁による「一票の格差」の違憲判決を受け、是正しなければという思いとともに、来年の通常国会で消費税増税を議論する前提として「国会議員自ら痛みを伴わなければ国民の批判を交わせない」として、議員定数の削減もセットに行わなければならないということだろう。

 だが、自民党の谷垣禎一総裁が「各党の党利党略を乗り越えて、国民の声を最大限に国政の場に反映させられる選挙制度のあり方について、きちっとした議論を行っていきたい」と言うのとは裏腹に、党の消長を決定付ける根幹の制度だけに、そういうきれいごとで事は進むわけがない。

 自民と民主は、現行の小選挙区比例代表並立制を認めながらも比例の削減数で大きな差があり、民主の方が積極的に見える。みんな、共産など比例代表を命綱にしている政党は小選挙区の廃止を含めての抜本改革を主張している。そのため、今国会ではせいぜい衆院選挙区画定審議会の設置法案を成立させる程度で終わるだろう。

 谷垣自民党が早期の解散・総選挙に追い込むと鼻息を荒げている一方で、選挙制度を早急に改革するというのは両立し得ない。この日(10・13)の自民党平河クラブでの記者会見でも、冒頭から選挙制度改革への取り組みと「衆院解散の環境整備」に対して質問が出たが、谷垣総裁の回答はハッキリしなかった。そこで改めて記者が「衆院解散の環境整備の側面についてのご所見を」と迫ったが、どうも早急に改革をしようといった意気込みは感じられなかった。

2011.10.24

国対上の憲法審査会始動ではダメ

 憲法改正原案の審議などを行う憲法審査会が、衆参両院でようやく動き出すことになった。衆院は民主党の大畠章宏前国土交通相、参院は自民党の小坂憲次前参院幹事長が会長に選出された。この審査会は設置が4年前に決まりながら、民主党が議員名簿を出さなかったためスタートできず、いわゆる”違法状態”が続いてきた。
 それだけに審議の始動自体は評価できる。だが、民主党の消極的姿勢は変わらない。時事通信の記者が、民主党の輿石東幹事長に対して「野党が(審議会を)開会するように求めた場合、民主党としては特に反対せずに開会するととらえてよろしいか」と質問すると、輿石幹事長は「何を優先すべきかということになると思いますので、まず第3次補正を最優先にしていきますから、どこからということは現時点では言えないと思います」とやる気のない返答だった。
 それもそのはず。護憲派の旧社会党出身の輿石氏が積極的に改憲作業を後押しするわけがない。ここに来て議員名簿の提出に応じたのは、参院で少数派に甘んじている民主党が、衆参ねじれという国会対策上、必要と判断したから野党自民党の強い始動要求を呑んだに過ぎないのだ。したがって、輿石氏の発言が示唆しているように、これで改憲機運が一気に盛り上がることにはなりそうもない。
 自民党は、日本が事実上、主権を回復したサンフランシスコ平和条約の発効から60年の来年4月28日までに新たな改憲草案をまとめ、審査会での審議を求めたいとしている。これに対して、「憲法の還暦(2006年)までには党としての改憲案をまとめる」と言っていたはずの民主党は”公約”破りを続行中だ。
 憲法は国のあるべき姿を示すとともに、国防や国際貢献のあり方などを具体的に明確にするものだ。他国の対日理解を深める意味でも重要である。東日本大震災で不備が指摘された緊急事態条項を憲法に盛り込むのか否かも喫緊の課題ではないか。第3次補正が重要なのはその通りだが、憲法改正も優先課題にしてもらいたい。

2011.10.09

外相が安保をまず犠牲にする?

玄葉外相が取り上げた孔子の言葉は、弟子の子貢に「政治において重要な点は何か」と問われて答えた内容である。「教養ある大臣」との印象を与えたかもしれない。
 同外相は、この見解をもとに、その後の会見でも記者からの質問を受けながら、「信」すなわち、価値をしっかり踏まえた外交の重要性を訴えている。
 だが、これに関するやり取りは続きがある。子貢は、ではその三つのうち、止むを得ずして一つを除くとしたら、どれを除きますかと再問。孔子は言下に、「兵を去れ」軍備を捨てよ、と答えている。子貢はさらに続けて、その二つとも保持し得ない事態が到来した場合、どちらを捨てますかと質問。孔子は「食を去らん。古よリみな死あり、民信なくんば立たず」と答えている。
 従って、見方によっては、外相自らの担当分野である安全保障をまず犠牲にするという見解を示したことになり、口さがないネット情報では、この外相発言は軽率との批判も出ている。さらに、この見解を、クリントン米国務長官が電話会談で「完全に同意する」と支持したと玄葉外相は説明。中国では、これに関する一連の発言をフォローしながら、笑っているかもしれない。「外相の言や良し」だが、論語の内容をトータルに弁えた上で、そうした誤解を生まぬよう補足しながら説明する見識が必要だろう。
 また、そこまで突っ込んだ質問を行い、大臣と丁々発止と遣り合うような雰囲気が、エリート記者が集まる外務省の会見では欲しいものである。

2011.10.09

疑惑の釈明で防戦デビュー

 野田佳彦首相が無難な政権運営をするために「余計なことは言わない、やらない」「派手なことをしない」「突出しない」の安全運転3原則を側近議員らに指示していたと言うが、議員個人の疑惑に対しては全く効力を発揮し得ない。
 就任早々から疑惑浮上の平岡秀夫法相は、会見でも釈明に追われた。大臣の政党支部である山口県第2区総支部が開催したパーティーが大臣規範に抵触するのでは、との問題と資金管理団体「秀友会」が品川美容外科(東京都)の創業者から計300万円の献金を受けていた問題だ。品川美容外科の医師が起訴されたことで問題となり、「速やかに返金したい」と語った。
 記者側はその勢いで、外国人献金問題についても質した。前原誠司外相(当時)、菅直人首相(同)もこの問題で追及されており、「法相はどうなのか」と迫ったわけだ。「もう一度、チェックはしてみる」とは言うものの、法相は「ほかの先進国と比べて、日本はかなり厳しい」し、「金を受けてしまうことで、影響を受けてしまうのかが問題。そういう懸念をどこまで制度化していくかが問題の基本ではないか」と語ったが、そんなことはないはずだ。献金をする側は、影響を与えるためにするのであって、それが外国人・団体であれば国益に反する危険性があるとの観点で政治資金規正法は制定されたのである。
 記者側の質問に防戦一方となり、苦い会見デビューとなった印象だ。

2011.10.09

自治基本条例制定に警戒感

 憲法より上位に位置付けようとするなど、行き過ぎた内容を盛り込んだ自治基本条例が全国の地方議会で制定されるケースが目立ってきていると言う。そこで、自民党の石破茂政調会長は、冒頭、地方の党所属議員と「問題点を共有したい」ということで、党内で検討された「論点整理」をもとに地方へ働き掛けることになった。
 この基本条例、もともとの考案者は自治労で、憲法に規定された地方自治の根本を揺るがすもの。「市民」という得体の知れないプログループを地方行政に参画させる仕組みを新たにつくり、自治体の予算で思想・イデオロギーを蔓延させていこうとする狙いがあるようだ。
 現在、200近い基本条例が制定されており、その中には問題のないものもあるだろう。だが、石破政調会長の言うように、憲法の最高法規性に抵触する可能性があったり、憲法に示された国民主権、国家主権と異なる政治用語である「地域主権や住民主権」などが使われるなら、「憲法の趣旨からしても排斥されるべきもの」であるのは確かだ。
 民主党は「地域主権」という言葉を使っているが、どうも飛鳥田一雄元市長がかつて「自治体は革命の砦」と位置付けて「中央政権を包囲する」とした革命イデオロギーとの結び付きを予感させる。自民党が言うとおり「特定の団体のイデオロギーにとらわれない」ことが地方自治を守り推進していくことになるのだ。