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2012.03.10

「新しい公共」という危険思想

 中川正春大臣が、就任会見の冒頭から「新しい公共」への取り組みに触れるほど、「新しい公共」という理念は「民主党のDNA」(松井孝治参院議員)になっているようだ。中川大臣は市民公益税制の大幅な拡充を踏まえて、N P Oなどに新たな公益部門を担わしていく考えを強調した。

 だが、ここに懸念される問題が潜んでいる。「新しい公共」の思想はもともと、法政大学教授を長く務めた松下圭一氏が創出したもの。行政が独占していた公共を民間の手にも委ね、NPOなどの市民組織によって「市民自治」を形成し地域主権を確立していくという考え方だ。

 鳩山由紀夫元首相のスピーチライターでもあった松井議員も、「新しい公共とは、長年官が独占してきた公の機能を、その本来の持ち主である民への奉還を意味している」と述べている。

 単に、一般の民間人が公共の活動に参加していく新たな仕組みづくりをするというだけなら、何の問題もない。ところが松下理論を「現実の政治の場で実践」(菅直人前首相)していく先にあるのが、市民という名の外国人運動家や左翼活動家らがNPOという組織を隠れ蓑にして「官」の代わりに政策決定に関わる足場を拡充していくことにある。霞ヶ関に「新しい公共」についての担当大臣まで置いて、霞ヶ関が弱体化していくとなれば問題のはずだ。

2012.03.10

規制をしつつ適切な再稼動を

 東京電力は、このほど企業向けに17%、一般家庭に対しては10%の電力料金の値上げをすることを発表した。これに対して、あるアンケートによると中小企業の約8 割が反対を表明している。東京電力福島第一原発事故を受けて、原発アレルギーから、その稼働率は下がり続けている。当初、計画停電が実施されたが、いよいよ今度は具体的な電気料金値上げという形で、企業の経済活動や一般庶民の生活に跳ね返ってくることになる。

 単純に言えば、原発問題は、「コストか安全」かの選択として国民の前に分かりやすい形で提示された。これに対して細野原発事故担当相は、コストの問題と原子力の安全の問題を関係づけるべきではない、と会見で明言。そのうえで、従来の組織では、そういう視点が絡んでいたとの見方を示唆する一方、4月に発足する原子力規制庁で、そうした関係を改める姿勢を表明した。

 それは重要なことではある。ただ、現状は余りに原発の再稼動をさまざまな視点から批判するメディアの影響から、再稼動の権限の一端を担う地元の首長が慎重姿勢を崩さない。

 このままだと、4月には原発54基すべてが止り、関西電力では夏のピーク時に25%も電力不足となることが判明。経済に重大な支障をきたすことになる。原子力規制庁を機能させつつ安全確認を明確にし、適切な原発の再稼動を行うべき時期に来ている。

2012.03.10

同時通訳で日本外交アピール?

 米財務省が2月半ば、イラン中央銀行と取引のある外国金融機関を制裁対象から外す条件であるイラン産原油輸入の「大幅な削減」の判定に際し、削減の量や比率、将来の契約の解除など、当該国の努力を考慮すると規定した。具体的な数字は明示されてないが、昨年末成立のイラン制裁法を運用する上での指針を発表したものだ。

 イランをめぐる国際情勢を反映し、外相会見では、この問題でのやり取りが目立っている。また、外務省は毎週水曜日の外相定例会見に、英語の同時通訳を導入することを決定し、1月18日に初めて実施された。中国への関心が国際社会で高まる中、日本の外交政策の発信を強化する点にあるとされるが、この日の会見で、パキスタン人記者がイラン制裁について英語で質問したように、イラン問題での日本のスタンスを国際社会に発信しやすくする狙いもあろう。そのほか東日本大震災による原発事故の影響で、国際的に風評被害が広がり、日本の外務省が積極的に世界に向けて情報発信することを余儀なくされている。

 経済力低下で国際メディアからジャパンパッシングされつつあるうえでも、日本外交が新たな役割を果たす時期に来ているが、外相の発言は依然、ニュースになるものは乏しい。

2012.03.10

死刑命令に有言実行なるか

 民主党政権となって6人目の法務大臣となった小川敏夫法相。初登庁後の記者会見で、「執行すべき死刑確定者が執行されないままどんどん増えていくというのはあまり法律の趣旨には合っていないのではないか」と述べて、死刑執行から逃げない姿勢を示したのは評価できるが、果たして有言実行となるのか。

 刑事訴訟法は「法相は判決確定の日から6ヶ月以内に死刑執行を命じなければならない」と定めている。しかし、2010年7月に死刑が執行されて以降、わが国では死刑執行は行われていない。このため、現在の死刑囚は132人と、これまでで最も多くなっている。

 死刑執行に抵抗感を持つのは、どの法務大臣でも同じだろうが、判決が確定しても執行されないなら、わが国の刑事司法制度の根幹を揺るがす状況と言える。前任の法務大臣には、法務省内に設置した死刑制度に関する勉強会が続いていることを理由に、執行命令の忌避を正当化する傾向があった。しかし、「議論は煮詰まっている」とする小川法相は勉強会の報告書を速やかに公表するとともに、執行命令と勉強会は別問題であることを示すべきである。

 山口県光市で起きた母子殺害事件で、犯行当時18歳になったばかりの被告への死刑判決にもみられるように、刑事裁判は被害者遺族の感情に配慮しながら、厳罰化の傾向を強めている。

 今後も死刑判決が増えることが予想される中で、死刑執行されないままに確定囚がどんどん増える状況を放置することはもやは許されない。死刑執行についての小川法相の責任が問われている。

2012.03.10

近隣につけ込まれる田中人事

 参院で問責決議を可決された「素人大臣」一川保夫防衛相の後任として1月の内閣改造で就任した田中直紀新防衛相の資質が、通常国会冒頭から問題となっている。予算委での質疑で、ピント外れの答弁をして委員長から「ちゃんと答えてください。質問はこういうことでしたよ」と解説されてやっとのことで答弁をしたのはたびたびのこと。勢い込んで答えてもそれが間違っていたり。ひどいのは、外交・防衛問題の集中審議の際、無断で15分間も席を離れ、議員食堂でコーヒーを飲んでいたりとか。

 あまりのひどさに「義父の田中角栄や妻の真紀子さんを相手にしてさえ今日があるのだから、最強の防衛相かもしれない」との皮肉交じりのブラックジョークまで流れている。

 この不適材人事は、党内融和を図るための小沢一郎対策で行われたものだ。輿石東幹事長は会見で、「私に責任をとれということ? そういうことで責任をとれと言うなら、とりますよ。だけど、とれないじゃないですか」と開き直ったが、参院議員会長で小沢氏に近い輿石氏が参院枠を使って田中氏を起用したのは明らかだ。

 その人事を野田首相が輿石氏に丸投げしてきたのは前防衛相の時も同じ。いつまでも「口頭試験」を続けるような国会審議を続けていると、近隣諸国につけ込まれるだけだ。

 国家の安全保障の最高責任者としての首相の資質も問われている。