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2012.07.09

丹羽大使の続投は反国益

 石原慎太郎都知事が尖閣諸島購入計画を発表したことについて、丹羽宇一郎駐中国大使が英紙「フィナンシャル・タイムズ」のインタビューで、「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらす」と述べたことで、大使の更迭問題が急浮上した。

 大使は、わが国を代表する特命全権大使。それなのに、中国大使がするような発言を平然とした。自民党が怒るのは当然である。

 藤村修官房長官も「政府の立場を表明したものではない」と打ち消したが、「もう一切、このようなコメントはしない」と本人が言っているので、この件は水に流して欲しいと懇願するお粗末さだ。

 だが、丹羽氏は中国進出に力を入れてきた伊藤忠商事の社長、会長を歴任したビジネスマン出身。その彼に極めて微妙かつ重要な対中外交を任せて大丈夫か。

 一昨年の尖閣諸島沖での中国漁船による衝突事件の際、問題を大きくしないために中国へのODA強化を外務省に求めたのも丹羽大使だった。北京で新築した日本大使館の使用許可を中国側から得るため、在日中国領事館の移転・拡張に協力する口上書を書かせるよう外務省に持ちかけ実現させたのも丹羽氏だった。ほかにも中国の利益になる形で動いている。たとえ、丹羽氏が「このようなコメントはしない」としても国益に則った行動が伴わなければ意味がない。

 平河クラブの自民党担当記者が対中問題を「過剰に取り上げているのでは」と谷垣総裁に尋ねたが、そんなことはない。国家主権にかかわる重大問題を真剣に議論してこなかったマスコミの姿勢も問われるべきだろう。

自民党・谷垣禎一総裁の記者会見

2012.07.09

外相の立場弁えぬ暴論

 この玄葉外相の講演内容に関しては、佐藤優・元外務省主任分析官が東京新聞の「本音のコラム」(6月8日付)で「人種主義」というタイトルで批判している。

 「玄葉氏の発言を素直に受けとめると社会進化論に基づき人種を強化し、ポピュリズムを排除したエリート政治を行うということになる」とし、最初の記者が疑問を投げかけたように、外相がナチス・ドイツの人種主義のようなことを公言するとは何事かと噛みついた。

 だが、そもそも一国の政治を生物の進化になぞらえて説明する感覚自体が、グロテスクである。約6550万年前、恐竜は変化に対応できずに絶滅したが、その後、恐竜から分岐進化したものに始祖鳥がおり、鳥類はいまでも生息している。玄葉外相の話は、簡単に言えば、恐竜のようになってはダメだという意味になる。

 だが、人類自体が他の動物と異なり、火を使い、文字を持ち、様々な自然災害を経ながら、それに対処し得る文明を築き、文化を発展させてきた。こうした人間が集まって形成している国の政治は、進化論に例えて説明するような類の話では到底ないのである。ダーウィンの進化論自体、科学的に疑わしく、米国ではインテリジェント・デザイン(ID)の考え方が広まりつつある。

 国民の大半が聖書を文字通りに信じる米国が最重要同盟国である日本の外相が、相次いでこの例えを語った。

 発言の背景には「マニフェストも状況に応じて変えるべき」との意向があるのかもしれないが、外相の立場を全く弁えない暴論である。

玄葉光一郎外相の記者会見

2012.07.09

スパイを法で取り締まれ

 在日中国大使館の1等書記官による不法な諸活動が「スパイ活動」ではないかとの問題が起き、その関連で農林水産大臣、同副大臣が内閣再改造に伴い、事実上解任される事態にまで発展した。

 松原国家公安委員長が「国益にプラスになる」ために秘密保護法制を早期に整備する必要性を会見の冒頭、語ったがこれは当然のことだ。

 記者から「大臣はスパイを取り締まるようなスパイ防止法というよりも、情報漏洩を防ぐような秘密保護法制を確立するということが重要だというふうにお考えでしょうか」との質問が出たが、法整備の最大の狙いは国益の尊重にある。情報漏洩の元凶となるスパイを取り締まることができなければ目的は達成されない。そのため、旧共産圏はもとより米国は連邦法794条、英国は国家機密法1条にスパイ罪を設けて対処しているのだ。

 わが国の場合は、国家公務員法、地方公務員法、外務公務員法、自衛隊法などで、情報漏洩防止を図っているが、スパイ活動自体を規制したものではない。スパイ罪がないので、日本は「スパイ天国」との汚名を着せられてきたのだ。

 今回、中国の1等書記官による不法活動が追及されているが、外交官や駐在武官は特殊訓練を受けたインテリジェンスオフィサー(情報機関員)と見なすのが当たり前で、捜査機関は彼らが獲得するエージェント(協力者)の活動まで監視し取り締まる必要があるのだ。「閣僚懇談会では(法整備について)極めて好意的に受け止められた」ということであれば、松原氏はこの不法活動の全容解明とともに、スパイ防止法の制定に向けて一層尽力すべきである。

松原仁国家公安委員長(拉致問題担当)の記者会見

2012.07.09

再審前に「無罪」の印象

 東京電力OL殺人事件で、再審開始決定を受けたマリナリ元被告を母国ネパールに帰国させた措置は、制度上の不備を露呈させる結果となった。

 1994年に観光ビザで来日した同元被告は、不法残留で強制退去となったが、再審開始については、東京高検が異議申し立てを行い、その結論が出る前に、同被告の強制退去は行われている。これでは制度の存在意義が薄れてしまう。

 また、再審では元被告に出廷の義務はなく審理そのものに影響はないが、もし再審で有罪と認められても身柄をふたたび確保することは不可能な状況だ。日本とネパールは犯人引渡条約を結んでいないからだ。

 こうした状況を考えると、マリナリ元被告の帰国を認めた時点で、わが国の裁判所は再審の前に、同元被告の無罪を事実上認めたようなものである。これはで再審開始の意義も薄れてしまう。滝法相が記者会見で「(現在の制度が)このままでいいのかということも含めて検討しなければならない」と語ったのはこのためだ。

 さらに、6月8日の記者会見で、滝法相は「捜査が十分ではなかった」と発言している。「元被告が犯人であることは揺るがない」とする検察側の姿勢を暗に批判したことになるが、なぜ不十分な捜査がまかり通るのか。同法相はその構造的な問題点を徹底的に解明し、捜査当局に対する国民の信頼回復に努めるべきだろう。

滝実法務大臣の記者会見

2012.07.09

受け入れ反対運動切り返す大臣

 原発に関しては「政府がやっていることは、何でも悪いこと」いう視点で記者が質問することが多い。このため、放射能と無関係のがれきまで、線量が上がったなどという情報を付加する。また、住民の中に不安に思い反対を唱える人がいるのに、それを行政が実行に移すとは怪しからん、という視点で取りあげる。この瓦礫処理の質問はその典型的なものだ。

 細野担当相が説明するように、石巻のがれきは原発事故とは無関係で、放射能の数値も全く問題はない。それにもかかわらず、住民の意見を聞こうとせずにがれき受け入れを強行したと論(あげつら)う住民の側に立ち、政府を責め立てる。危険性を強調すれば、センセーショナルなニュースとして、その媒体がよく売れる、という商業主義的な思惑もあろう。

 宮城県石巻市からがれきを積んできたトラックに対して、北九州市の焼却工場前で反対派が座り込み、搬入が8時間半以上も遅れ、公務執行妨害で男2人が逮捕・送検された。その妨害行動には(極左過激派の)中核派が関与していたことが、中核派のHPから判明している。

 となると、単に商業主義というより左翼と結託した質問ではないか、と勘ぐりたくなる。受け入れ反対派の実情を暴くような質問をする透徹した目を持つ記者はいないものか。

 左派系記者は、小学校の修学旅行中止の例を持ちだし、政府の政策が子供の楽しみを奪ったかのように畳みかけた。細野担当相は、そうしたことでがれき処理ができないということは「絶対あってはならない」と述べ、それを妨害することは「被災者を傷つける」と逆に人情論で押し返した。その受け答えは天晴れだったと言える。

 
細野豪志原発事故担当相の記者会見