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2012.12.17

政界引退前の「冤罪」謝罪

 田中慶秋前法相の辞任を受けて、24日間で再登板となったが、遠隔操作ウイルスによる誤認逮捕のあと、東京電力女性社員事件の再審公判で、ネパール人のマイナリさんの無罪確定と続いた滝実法相にとって、政界引退前の法相の座はあまり座り心地の良いものではなかっただろう。

 11月9日の記者会見では、「十分な解明がなされないままに有罪判決があり、その結果15年という長い拘束期間が経ってしまったことは、大変申し訳ない」と謝罪した。しかし、マイナリさんのケースが冤罪かどうかについては「常識的に世間一般の感覚から冤罪を広くとって言えば……冤罪と言えないこともない」と言葉を濁した。

 誤認逮捕や冤罪事件で明らかになったのは、現在の警察・検察では、真摯に真実を追究するという基本的な姿勢が疎かになっていることだ。最近続く警察・検察当局の〝失態〟に対して反省を促し、今後の「戒め」とするためには「冤罪」とはっきり認めたほうが良かった。

 衆議院議員総選挙に出馬せずに政界を引退する意向を表明したのは4月だった。それ以降、野田第2次改造内閣で法相として初入閣。野田第3次改造内閣発足に際しては、高齢を理由に再任を固辞し、異例の再就任となったが、それも衆議院の解散によって短期に終わった。「もう年なので、できるだけ外してもらった方がいい」と、内閣改造の際に法相交代を求めた政治家に、警察・検察改革への強い姿勢を期待しても無理な話か。

滝実法務大臣の記者会見/ゴビンダ冤罪問題

2012.12.17

「主権」を経済文化交流で回避

 最近、一貫したテーマが無い玄葉外相の記者会見だ。北朝鮮との政府間協議、米軍関係者による事件・事故の防止策、尖閣問題、ガザ情勢など多岐にわたる。

 外交について、様々な事柄が外相に関わってくるのは当然だが、玄葉氏の外交姿勢をその中から汲み取るのは難しい。さらに今回、衆議院の解散が加わり、記者会見での質問、回答は一層、テーマが入り乱れた。

 だが、その中で外相発言から浮かび上がったのが政権公約で集団的自衛権の行使を掲げ主権問題を前面に出す自民党と、FTPや日中韓FTP問題に前向きな姿勢を示す民主党の違いだ。

 玄葉外相は、「主権にかかわる問題は時間がかかる」とし、「経済・人的・文化的な交流、こういった分野は改善できるところから改善していくということを考えたい」と会見で表明。

 主権に関わる問題は時間がかかるといっても、政権党の方針が明確に集団的自衛権の行使という主権国家として当然の権利を行使しなければ、時間をかければかけるほど、周辺国から防衛政策の不備に付け込まれ、状況が悪くなりかねない。その点を、外相は会見で煙に巻いた。

 世論調査では、憲法改正まで踏み込む安倍自民党の政権奪還の可能性が高まっている。民主党の及び腰外交との違いがどういう変化をもたらすか、しっかりウオッチする必要がある。(Y)

玄葉光一郎外相の記者会見/国防懸念を日中韓FTAでカバー?

2012.12.17

地方を痛めた小泉政治反省を

 自民党の安倍晋三総裁は、念願の衆議院解散に追い込んだ当日( 16日)だけあって、記者会見では意気揚々と多弁に抱負などをアピールしていた。経済、外交、安全保障、教育などの政策方針に触れながら、安倍カラーを懸命に打ち出していた。

 ただ、記者側から問われた「古い自民党」について3年間でどう総括したかについては急所ハズレで、危うい自民党の一側面を露呈したと言える。

 安倍総裁は、今回の総裁選挙について「最後の決勝に残ったのは石破幹事長と私だ」としつつ、「両方とも、派閥単位、派閥出身者としてその出身派閥に全面的に応援された候補ではなかった」点を強調し、これが「古い自民党」政治ではないことを強調した。

 だが、焦点を当てるべき問題は、二人が決勝に残ったものの、その前段での第一回投票で全国の党員票が安倍87票、石破165票となぜダブルスコアの大差がついたのかという点である。

 決選では国会議員だけの投票だったため、108対89となり、2位だった安倍氏が逆転して勝利したが、これには派閥力学が働いたことは明瞭である。

 石破氏の持論は、「小泉政権の下、あの(郵政)総選挙で圧倒的に勝ったときから自民党の劣化は始まった」というもの。議席は大幅に増やしたが、地方では得票数、得票率はともにかなり落とした地域が多かったことを直視し、その分析と対応を怠ってきたのではないか。

 自民党はもともと地方の基盤が強かったのだが、石破氏は地方を何度も回って「悲哀」を聞き、小泉政治の荒っぽさを反省してきたのである。

 安倍総裁がその反省抜きで新たな政策を次々と訴えても、新しい自民党の未来は確固たるものにはなるまい。

自民党・安倍晋三総裁の記者会見

2012.12.17

解散決断を聞かされていた余裕

 岡田克也副総理は、野田佳彦首相の今回の電撃的解散発言で名をあげた。首相が11月14日の安倍晋三・自民党総裁との党首討論で、解散への決断を口にすることを事前に知らされていた、ごくわずかな人数の側近だったからだ。

 岡田氏は、もともと野田首相に近かったからではない。それだけ野田首相が信頼していたからである。昨秋の民主党代表選挙で野田氏に投票。そして大方の予想を裏切り、野田氏が代表に選ばれた。

 その選択眼を買って、野田首相は岡田氏を官房長官に当てようとしたが岡田氏は固辞。しかし、その後、首相の一貫した税と福祉の一体改革実現の姿勢に共鳴。消費税増税を支持し、副総理就任も受け入れた。

 そして党首討論の当日は、この記者会見で語っているように、首相に冗談を言って落ち着かせようとするほどの余裕を見せていたのだ。

 また、解散のタイミングの説明も結果論とはいえ理路整然としている。しかし、政界は岡田氏が述べるように、政党トップの意向に所属議員が全員従うような行動をそう期待することはできない。いわんや自民党からの政権奪還を目標とし、聞こえの良い政権公約ばかり並べた民主党が、いずれガタガタになるのは予想できたことだ。

 岡田氏は、選挙後のことは具体的にコメントしない方がよい、とするが、三党合意を土台に、それを重視して大きな役割を果たした岡田氏の出番が、また訪れる可能性はある。

民主党・岡田克也副総理の記者会見

2012.12.17

民主の「脱世襲」って違憲か

 岡田克也副総理(行政刷新担当大臣)が自民党との違いを鮮明にするために、民主党は「脱世襲」であることを強調する。羽田孜元首相の息子の羽田雄一郎参議院議員(国土交通相)が、父親の選挙区を地盤として衆院にくら替えしたい意向を示したが、同党はそれを許さず、出馬断念に追い込んだ。

 しかし、果たして世襲であること自体、問題だろうか。民主党の内規では「3親等以内の親族が同じ選挙区から続いて出ること」が世襲であるとして禁止になっている。これは岡田氏が幹事長時代に決めたもので、岡田氏らしい硬直的な発想から生まれたルールだと言える。

 これについて自民党の高村正彦副総裁は「お父さんが羽田孜だというだけで公認しないのは、まさに血による差別だ」とし、「国民のためになるかならないかを決めるのは国民自身である」と語ったが、その通りだ。自民党は衆院選に、福田元首相の長男、武部勤・元幹事長の長男、中川秀直・元官房長官の次男らを公認候補として擁立するなど世襲を事実上、容認している。

 日本国憲法は第14条で、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と記しているが、民主党による「血による差別」はこの憲法条項に違反するものではないか。

 民主党が候補者の発掘でもっと気を使うべきは、自己主張型の口達者なシロウトではなく、世襲であろうとなかろうと、教養、胆力、指導力のある良質な人材をいかに獲得するかである。〝赤い貴族〟の労働組合に頼りっきりの選挙戦術では、ますます国民の心から遠のくことに気づくべきだ。

民主党・岡田克也副総理の記者会見