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2013.02.15

武器使用基準の拡大を

 政府・与党はアルジェリアでの邦人ら人質死亡事件を受けて、海外で災害やテロに遭った日本人の保護のための法整備に入ったが、まずはこれまでの不作為を厳しく自省すべきだ。

 今回の事件は内陸部で起きたわけだが、現在の自衛隊法では陸路での輸送・救出ができない。自衛隊の救援は、安全が確保された空港・港に限定されている。しかも、問題は、仮に陸路で救出することになったとしても、武器使用基準が限定されているため、邦人警護を十分にできない難点がある。

 「その最大の根源は海外での武力行使を禁じる憲法にある」(自民党幹部)のだが、自衛隊法にしても憲法にしても、その最大の目的は国民の安全を確保することにあるはずだ。憲法を守って国民は守れないというのでは本末転倒である。憲法9条の改正を急ぐべきであることはもとより、自衛隊法の改正が不可欠だ。

 自民党の石破幹事長が「(改正案の提出を)閣法という形でいくにせよ、衆法という形でいくにせよ、それは当然、同じ与党を組みます公明党の皆さまとよく意見調整しなければなりません」と語ったように、クリアしなければならない最初のハードルは、同じ与党の公明党の賛成を取り付けることだ。公明党の井上幹事長は「自衛隊の実力行使を伴う海外への派遣については、基本的には閣法でやるべきだ」と語ったが、いずれにせよ邦人保護への真剣な対応を求めたい。

 さらに注意すべきは、テロ・災害は遠いアフリカなどだけで起きるとは限らないことだ。北朝鮮が2010年、韓国の延坪島を砲撃した際、事態が拡大すれば韓国にいた邦人を自衛隊がどう保護、救出できるのかが問題になった。あらゆるケースを想定して法整備をしなければならない。

2013.02.15

旧社会党に近づく民主党

 「寄せ集め所帯」といわれてきた民主党。憲法、安全保障から経済、社会保障に至るまで、あらゆる政策で意見がバラバラで、とうとう結党の立役者だった鳩山由紀夫氏は政界を引退し、小沢一郎氏を中心としたグループは集団離党し、さらには先の衆院選で大惨敗して衆院では57人の勢力に縮んでしまった。

 この低落自体がかつての社会党の衰退現象によく似ているのだが、労働組合に依存しなければ成り立たない最近の党の状況も酷似している。海江田代表に記者が「労組依存の民主党の体質をどうやって乗り越えて、『維新(の会)』や『みんな(の党)』と連携していこうとお考えか」と質問したのもその表れだ。

 これに対して海江田代表は、「『労組依存の体質』と決めつけるのは少し控えていただきたいという思いがございます」と質問自体を嫌ったが、「私どもは、働く人たち、そして生活者の方々の立場に立とうということは基本的な考え方として持っております。労働組合の方々もその意味ではまさに働く方々であり、同時に生活者の立場であります」と語ったように、やはり労組依存であることを認めざるを得なかったのである。

 さらに海江田代表は「綱領もバージョンアップをしたものにと議論している最中」だとも述べたが、それも労組重視色が強くにじみ出たものになる見通しだ。かつての社会党は、官公労、日教組、民間労組を最大の支持基盤とし存続してきた。それらがそっくり民主党に移動し、残ったのが今の社民党である。民主党の党大会は2月24日。そこで綱領が正式に決定されるが、総選挙敗北の正確な総括と、党再生は難しそうだ。党のバラバラ感は解消できても、国民政党としての評価が薄れるのは必至である。

2013.02.15

仏軍マリ軍事介入に無関心だった記者

 わが国の政治で人質の人命救助ということですぐに思い起こされるのは、昭和52(1977)年、日本赤軍のハイジャックにより、福田赳夫首相(当時)の最終判断で人質の身代金約16億円と犯人が要求する連合赤軍の死刑囚3人を引き渡したダッカ事件だ。

 タカ派とされる安倍晋三政権といえども、それから一歩も出ていないことが、今回の事件に対する岸田外相の会見で露呈した。外相は、記者会見で人命尊重についての英仏首脳との発言の違いついての質問や人命第一とはテロリストと取引をするということか、といった質問に関し、はぐらかす応答を繰り返すばかりだった。

 欧州を訪問していて急きょ現地入りした外務省出身の城内政務官は、日本政府が、人質を取ったテロリストの行為を強く非難するとともに、アルジェリア政府に対し「拘束された外国人の人命最優先で対応するよう強く要請してきているとおり、人質の生命を危険にさらすような行動を強く懸念しており、アルジェリア政府が人質救出軍事オペレーションを強行したことは遺憾」と申し入れている。

 一旦、こうした見解を表明しておきながら、「英仏が一定の評価をしている」との問いかけをされると尻込みしてしまった格好で、ふらついた外交と言わざるを得ない。

 今回のテロ行動は、フランスによるマリへの軍事介入を止めさせる意図を持ったものだった。だが、仏軍の行動が明らかになった11日以降の記者会見で、この軍事介入をテーマにした質疑はまったく行われなかった。

 記者がアフリカ情勢に無関心であることも浮き彫りになった。(山)

2013.02.15

参院選向けの「教育再生」議論か

下村博文文科相は、年頭となる8日の会見で、「教育再生実行会議」の発足を明らかにし、そのテーマは、主にいじめ対策や教育委員会制度の抜本的見直し、大学の質量ともの改革などになることを明らかにした。

 とりわけ、いじめ対策防止基本法は今国会の会期中に可決させたい意向を表明。教育委員会制度の改革も参院選前に一定の方向性を打ち出し、大学教育についても一次報告の形で参院選に間に合うように提言をとりまとめる姿勢を打ち出している。いじめ対策については、各党とも総選挙での公約として掲げており、それを出し合って、議員立法で取りまとめたいとも述べている。

 この問題では、合意しやすいとの判断があるのかもしれない。だが、いじめ問題は今、体罰問題に関心が移りつつあるなど、焦点を絞り込むのは簡単ではない。

 いじめ防止対策基本法を前面に掲げた教育再生実行会議の議論は、結局のところ、参議院選挙対策の一環であることは否めない。急ピッチで変革していきたいとの意向も理解できるが、制度の見直しなどは、拙速は避けるべきだ。

 第一次安倍内閣のときも、教育再生会議を発足させて議論をすすめ、教員免許更新制度の導入などを決定した。このときも、タイミングは参議院選挙を意識した形になっていた。だが、年金問題がスキャンダルとして表面化し、参院選挙で安倍首相は大敗した。

 今回も、安倍政権にとって参院選挙での勝利が至上命題になっている。だが、参院選ばかりを意識して政策論議を進めるのはいただけない。必要な時間を十分かけて議論を深め、相応しいいじめ防止対策や制度改革案を見つけ出すことが重要である。(Y)