Home > 6月, 2013
2013.06.18

ヘイトスピーチの規制が課題に

 国連によって起草された世界人権宣言(1948年)は、その第19条で、「自分の意見を持ち、それを表明する自由」をうたっている。つまり、「表現の自由」は人権の一つだが、今、東京・新大久保などで、特定の外国人を指しながら「殺せ!」「叩き出せ!」と叫ぶデモが、機動隊に囲まれながら公然と行われているのは異様である。

 国会で論議の的となり、谷垣法相も記者会見で述べた「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)は特定の人種・民族の尊厳を傷つける言動であっても、実在する個人を対象にしていないため、現行法で取り締まるのが難しい。しかし、人権侵害に厳しい欧米には、そうした言動を法律で規制する国もある。

 わが国では、これまで社会問題として表面化したことがない上に、表現の自由との絡みから、法規制が検討されたことはなかった。表現の自由は民主主義の根幹に関わる問題であることに間違いはないが、人権擁護の観点からすれば、現状には課題もある。たとえば、欧米では規制が厳しい児童ポルノに対しても、わが国では表現の自由への過剰な配慮から「単純所持」を容認する一方で、わいせつなまんがやアニメを規制対象にしていない。

 へイトスピーチには、インターネットの影響も見受けられる。ネットの匿名性を利用し、掲示板への書き込みなどで特定の集団を攻撃することが日常化。それがネット上だけでなく、街頭デモへとエスカレートしているのだ。

 今後は海外で続く反日の動きに触発されて、わが国でのヘイトスピーチも激化する懸念があり、その法規制も政治課題になるだろう。とかく人権というと、国家権力からの弾圧に抵抗するといった構図で、長く左翼反体制派が主導してきた反動から、国民の人権意識が深化してこなかったのではないか。

 人権への配慮を先進国にふさわしいレベルに引き上げるため、法務省が啓発に力を入れるのは当然だが、量質ともの再検討が必要だろう。

2013.06.18

吉田茂「町人国家」のツケ

 またぞろ歴史認識で日本外交が周辺国から動揺させられている。今回は、橋下大阪市長の「従軍慰安婦は良くないが、他国も同じようなことをやっていたことを直視すべきだ」という趣旨の発言で、米国も仲間に加わり、一層、対処が難しくなった。

 保守派論客は、慰安婦制度はプロの娼婦を戦地に連れて行って性の問題をキチンと管理した方法であり優れた制度だった、と主張。

 慰安婦集めに官憲も一部関与していたという表現のある「河野談話」の撤廃を求めている。保守派論客にとり、岸田外相の「河野談話」容認の姿勢は当然、不満である。

 ただ、河野談話の背景となった実態調査報告からは、女性たちの生活は過酷であったにせよ、戦時においては精一杯の制度だったことが分かる。

 ソ連兵や戦後直後の米兵が日本人女性に、韓国軍がベトナム戦争でベトナム女性に行った人権蹂躙を知らないで、唯、謝り続ければ済むという考えで対処しても問題は解決しない。

 1982年の教科書誤報事件への対処で鈴木善幸政権の宮沢喜一官房長官が、教科書の書き換えなど無いのに中韓両国に謝り、近現代史の記述で自虐史観がまかり通る原因を作った。河野談話は宮沢政権下での出来事だ。

 真珠湾攻撃が「だまし討ち」とされる原因を作った在米日本大使館外交官の「最後通告」手交の遅れもある。この奥村勝蔵一等書記官は戦後、外務次官まで出世。吉田茂首相(当時)が抜擢したためだ。吉田が敷いた「町人国家」路線の本流とされる政権下で、後々、禍根を残す外交対処が行われ続けたことは単なる偶然だろうか。(山)

2013.06.18

川口環境委員長解任は行き過ぎ

 参院は川口順子環境委員長(自民)の解任決議を賛成多数で可決した。憲政史上、衆参常任委員長の解任は初めてのこと。理由は、中国外遊の1日延長を無許可で行ったから「国会軽視の暴挙」というものだ。川口氏は許可を得ようとしたが「ギリギリの時間になっても日本からの連絡が無かった」ため、自主判断で「国益上」残ることを優先したという。

 国会の会期中、参院で外遊が許可されること自体珍しく、川口氏が日程を守ることは確かに義務に近いものがある。そこで本人も陳謝した。残ってもどれだけ国益を得られたのか推測不能だが、数の力でクビにしてしまうのは、行き過ぎだ。委員会の開会が極めて重要であったなら、委員長代行を立てて開会し議論すればよかったろう。

 支持率の高い安倍政権への攻め手に欠く民主党参院のドン輿石氏が、ここは攻めの好機ととらえたからだろう。だが高市政調会長の言う通り、自民党側は国会運営をかなり丁寧に行っており、輿石氏の傲慢運営というのは当たらない。むしろ、逆だ。

 今年1月に起きたアルジェリアでの日本人人質事件の教訓を生かし、邦人救出を目的として自衛隊の活動の幅を広げる自衛隊法改正案の取り扱いをめぐっては、民主党議員が委員長の参院外交防衛委員会で不正常な運営をしたりして審議未了、廃案を模索しているのは、国民の生命と財産を守るという国会議員の本来の責務を忘れた傲慢運営だと言える。「良識の府」とは程遠い。

2013.06.18

9条改正案まとめ中身の議論を

 7月の参院選を目前にしても、民主党は国家の背骨となる憲法改正についての姿勢も国家の安全保障の在り方についてもあいまいで、海江田万里代表の記者会見での回答は終始逃げ腰だった。これでは、いくら「大反省会」と称する政権時の総括をして出直そうとしても、国民からソッポを向かれてしまうのは避けられまい。

 会見で特に問題となったのは、民主党の細野豪志幹事長がその1日前に行った「集団的自衛権の行使の限定容認」発言を海江田代表がどうとらえているのか、だった。ところが、代表は軽くかわすつもりだったようで「幹事長とは毎日のように顔を合わせているので聞いておく」と逃げをうったが、記者たちは食い下がった。「代表(自身)は(集団的自衛権の行使について)どう思っているのか」「代表の言う集団的安全保障とは何か」「細野発言との関わりとは」などの質問を連発。代表は「しっかり議論をしなければいけない」と答えるのがやっとだった。

 集団的自衛権の問題は憲法改正問題に直結する重要なテーマである。2005年に民主党の憲法調査会がまとめた「憲法提言」では、「『制約された自衛権』を憲法で規定し、自衛権の範囲を明確にする」と記した。96条の憲法改正のための発議要件の緩和の先行処理に反対でも、9条改正案をまとめて中身の議論で自民党案と対決するよう歩を進めてもらいたい。