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2014.09.20

対北朝鮮での独走は禁物

 北朝鮮による邦人拉致被害者などに関する再調査結果が北朝鮮から発表される直前のタイミングで内閣改造が行われ、拉致担当大臣が山谷えり子参院議員に代わった。これについて安倍晋三首相は、(前担当大臣の)古屋圭司氏と山谷氏と自分自身とのチームで20年間取り組んできたことを強調したが、その辺の信頼関係は、拉致被害者家族の反応を聞けばよく分かる。

 家族会の飯塚繁雄代表は「山谷氏にはどんどん具体的な意見を言ってもらいたい」と期待。横田めぐみさんの父・滋さんも「最も適任で希望が持てる」との声だ。外務省、担当大臣、与党はじめオールジャパンで臨むことが肝要である。

 問題は、北朝鮮の出方が予想以上に軟化してきた場合に、安倍政権がどういう姿勢で対処するかだ。もちろん、拉致被害者らが全員帰還することが目的であり、妥協の余地はない。しかし、北朝鮮がこれに国交正常化交渉を絡め、巨額な賠償を請求してきた場合にどう出るのかだ。

 北朝鮮問題は拉致だけでなく、核・ミサイルとの3点セットで対処しなければならない。米国、韓国との共同歩調が不可欠なのだ。もし、安倍首相が拉致問題のみで独走し、北朝鮮に急接近するようなことがあると、北東アジアにおける安全保障のバランスが崩れかねない。

 この問題を進展させていくには、米韓と緊密に連携し理解を得る努力を怠ってはならないのだ。安倍首相が唱える積極的平和主義で地球儀を俯瞰する外交を展開するのは歓迎するが、隣国との外交関係の進路を誤ってはならない。

2014.09.20

国家の危機対応を忘れるな

 久々に民主党の政権批判のボルテージが上がった。集中豪雨による広島での大災害で多数の死者が出た原因として、大畠章宏幹事長は「政府の危機管理対応」が不十分であり、しっかりと「検証すべきだ」と繰り返した。3・11の東日本大震災の経験もあり、政府があらゆる角度から検証し被害を最小限度に抑えるよう努力をすることは当然であり、秋の臨時国会では法改正議論を徹底して行うべきだ。

 ところが、大畠氏が「危機管理」の必要を叫べば叫ぶほど首をかしげたくなるのが民主党の国家の危機への対応である。安倍政権は中国や北朝鮮の動向をにらみながら、集団的自衛権の行使を限定的ながら容認する閣議決定をした。今後、関連法の改正に向けてさまざまな議論が国会で行われ整備していくことになるのだが、民主党はこと問題が「国家」になると、途端に危機の事情が見えなくなってしまう。

 民主党は今年の3月に「(集団的自衛権の)行使一般は容認しない」との見解をまとめたが、8月になると海江田万里代表が「現時点では行使は必要ない」と変更し、最近では「安倍政権の行使は必要ない」に変えた。党内の見解が真っ二つに割れて、なかなか一致点を見出せない妥協の産物だが、国家よりも党の事情を優先しているのは明らかだ。9月下旬に新たな執行部人事をするというが、国民・国家のない人事をいくら行っても党勢回復の決定打にはなり得まい。

2014.09.20

失言は無いが欠落する面白み

 岸田文雄外相は、今回、内閣改造で、自民党の重要な党三役候補に名前が出た。派閥の領袖として岸田派を率い、自民党が長期政権を誇った1960年.70年代に、いわゆる保守本流とされた派閥、宏池会の会長という立場だ。

 祖父、父、そして本人と三代にわたって国会議員を務める政治家の家系。それだけに、政治家、特に閣僚の発言の重大さを弁えており、記者会見ではいつもソツの無い答弁をしている。

 第一次安倍内閣の時、事務所経費問題で閣僚の失脚が相次いで、安倍内閣は約一年で崩壊した。その点、第二次安倍内閣は閣僚の不祥事でほころびが出ることなく、安定的な政権運営が行われている。

 外相が記者会見で答弁にソツが無いと言うことは、裏を返せば、その答えがニュースとして活字にならず、面白みがないということでもある。政治家の家系として生まれ、親戚にも政治家が少なくないことから、メディアで目立って知名度を上げる必要がないという事情が、こうした答弁姿勢に反映されているのかもしれない。

 29日の記者会見でも、自身の選挙区・広島市が関係する広島及び長崎の原爆投下70周年記念のNPT運用検討会議に関し、著名な外交関係の雑誌に投稿したとアピールした。本人としては、広島原爆70周年を、外相として迎え、地元にアピールすることを狙っているのかも知れない。

 会見出席の記者は、大臣の冒頭発言に込められた思惑に引っ張られることなく、ウクライナ情勢から質問が始まり、多岐にわたる質疑が行われたが、外相はこれまで何度も聞いた答えを繰り返している。

 慰安婦問題について挑発的に聞かれたが「河野談話は変わらない」と説明。日中首脳会談の見通しについても「中国に対して、ドアはいつも開かれている」といった具合だ。8月5日以来の久々の記者会見にしては盛り上がりに欠くものとなっている。(石)

2014.09.20

“吉田証言”に触れぬ記述ならよいのか(記者メモ)

 内閣改造で幹事長候補に一旦のぼった下村博文文科相だったが留任。安倍首相の側近であり、この日の会見でも示されたように、微妙な問題への答弁の冷静さが評価されたものとみられる。

 この日の会見では、吉田清治証言を根拠にした従軍慰安婦に関する記述は文科省検定済「歴史教科書」にはなかったと説明。だが、保守派論客政治家としての説明としては大いに不満が残るものだった。

 朝日新聞は、このほど吉田氏の証言は虚偽だったとして、全記事の取り消しを表明したが、下村文科相は、それで従来の教科書記述が影響を受けることはないと表明した。

 吉田氏は、韓国済州島で日本軍により3年間で950人もの若い女性が慰安婦として強制的に連行されたと同紙に語っている。

 たしかに、吉田証言を直接引用した記述はなかったかもしれない。しかし、1993年6月30日には、高校日本史検定済教科書7社9種類のすべてに、従軍慰安婦に関する記述が掲載されることが判明。

 同年8月には河野洋平官房長官が、具体的な証拠は発見されなかったにもかかわらず、旧日本軍の強制連行を認める「河野談話」を発表。朝日新聞が従軍慰安婦問題をミスリードしたことにより、各教科書会社が、一様に従軍慰安婦問題を扱ったことは否めない。

 今年7月23日、ジュネーブの国連の人権問題を扱う委員会は、戦時中、日本軍による「性奴隷制度(sexual slavery)」が行われたと非難しており「米国だけで慰安婦像が2体、慰安婦石碑が6基ある。韓国の慰安婦像を加えるとさらに増える」(読売新聞、8月28日付)というのが実情だ。文科省のことだけ慮って、吉田証言とは無関係と言って済ませる状況ではないはずだ。国際社会は情報戦だ。細かい区別を説明する以上に、汚名を挽回するための情報発信を力強くやるのが大臣の役割である。(亀)

2014.09.19

原発再稼働、女性目線での説得に期待

 麻生太郎内閣の少子化相に続き、40歳にして2度目の入閣となった小渕優子経済産業相。一時は幹事長候補に名前があって、史上最年少でしかも女性幹事長という「超サプライズ人事か」と話題を集めた。しかし、所属する派閥内からは経験不足との慎重論が出て立ち消えに。

 それでも、経産相への起用は「サプライズ人事」。「将来の女性首相候補」とささやかれるだけに、安倍首相としては重要閣僚に起用し、経験を積ませる狙いがある。と同時に、この起用は、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略の中核として掲げる「女性の活躍」の象徴としての意味もある。

 まず、具体的に期待されるのは、九州電力川内原発の早期再稼働に向けた取り組みだ。初閣議後の記者会見で、小渕氏は「依然としていろいろと反対や不安の声が寄せられている。当然のことながら、再稼動に当たっては、立地の自治体など、関係者の皆様の理解をしっかりとっていくことが何よりも大事」と語ったように、再稼働の障害となるのは、地元住民の理解だ。

 その際、留意すべきことは、新規制基準に合格したとしても、それが必ずしも「安心」につながらないということだ。住民の理解の前提となるのは、原子力に対する科学的な知識でも、エネルギー政策に関する合理的な説明でもない。原発事故の教訓を活かそうとする誠実な姿勢が、政治家や電力会社から感じられるかどうかであり、この傾向がとくに強いのは子供を持つ女性たちだ。

 安倍首相が経産相に起用したのは、2人の母親である小渕氏なら、母親の目線に立って、住民を説得することができると考えたからだろう。就任早々、福島第1原発を視察するなど、精力的に動いているが、エネルギーのベストミックスは、原発ゼロの選択肢はありえない。目下の課題である川内原発の早期再稼働に地元の理解をどう得るのか。経済政策の手腕は未知数だが、ここで実績を残すことができれば「将来の女性首相」の座をぐっと引き寄せることになるだろう。