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2015.11.20

小泉進次郎は「飛躍」できるか

安倍首相の入閣要請を断った小泉進次郎衆院議員が「雑巾掛けをする」覚悟で党農林部会長に就任した。このポストは大筋合意したTPPの今後を扱う部会のまとめ役だ。要職とは言え日本の農業が打撃を受けることが確実であることから、激論必至の部会長は誰もが敬遠したくなるところ。政界関係者の話では「閣僚を断るとは生意気だ」との首相の激怒を買って懲らしめのために就けられたとさえ言われている。

小泉氏本人がデビューの席上、居並ぶ農水族議員を前に「私はこの部会の誰よりも農林の世界に詳しくない」とあいさつしたように、シロウトが利権の異なる農林問題のプロたち相手の議論にどこまで指導力を発揮できるのか誰の目にも未知数だろう。

しかも、谷垣幹事長がこの部会での「議論の進め方」について、「全員がある程度理解しながら進めるという、ある意味で日本の政治の議論の進め方の典型」であり、「若い政治家が難しい案件を処理するときの議論の進め方を学ぶには極めていいところだ」と指摘している。「カネのバラマキと言われないような対策を打たないといけない」と意気込む小泉氏だが、それほど議論の進め方が問われてくるのだ。

谷垣幹事長が「飛躍の土台にしてほしい」と期待するが、他者への批判は鋭いものの他者の意を汲みながらの調整能力を修養できるのか。まさに実験スタートといったところだろう。

2015.11.20

臨時国会よりも党首討論を

戦後最長の95日間も延長して安保関連法という重要法を成立させたのが先の通常国会だった。それを考えれば、臨時国会を開催する必要は必ずしもあるまい。

民主党の主張するように、懸案のTPPは11月に閉会中審査をする。安倍首相の予定は、中国、韓国との首脳外交、G 20、APECなどの外交案件が目白押しで、まとまった時間がとれない。

枝野幸男幹事長は「要するに安倍内閣というのは、立憲主義も法治主義も関係ない、人治主義の政府だということの証明を積み重ねている、こういうことではないですか」と開催に消極的な首相を批判している。だが、そうは言っても開催して何をしたいのかだ。

昨年秋には、小渕優子、松島みどり両閣僚の首をとり、新内閣でもスキャンダルを探して再び攻めたいとの意向があるのだろう。だが、それだけの野党第一党では決して支持率を回復できない。

「TPP大筋合意の内容を掘り下げ問題点を国会で浮き彫りにしたい」(民主党幹部)のなら、安倍首相と岡田克也代表との党首討論の日程を1日か2日程度組んだらどうか。45分という短時間ではなく、いくつかのテーマごとに計3時間程度の直接対決をすれば問題点がはっきりしよう。そこを両党とも、冬の宿題として党内議論をまとめ上げ年明け早々に始まる通常国会で論戦したらいい。

共産党との連携を模索するなどしてうつつを抜かし時間を無駄に費やしているよりは、よほど国民のためになる。

2015.11.20

遅すぎる性犯罪の厳罰化

キリスト教倫理を背景とする西欧社会に比べ、東洋社会は性倫理が緩やかと言われる。日本も例外ではなく、その象徴は児童ポルノだった。子供に対する性犯罪と密接に関わる画像や動画であるにもかかわらず、1999年までは製造や売買を禁じる法律はなかった。

記者会見が行われた10月9日、岩城光英法相が法制審議会に諮問した刑法改正の大きなポイントは二つ。一つは、強姦や強制わいせつは現行、被害者の告訴がなければ起訴できない「親告罪」だが、諸外国がそうであるように「非親告罪」として、被害者の告訴がなくても罪に問えるようにする。これが性犯罪の被害を潜在化しやすくする要因になってきたからだ。

もう一つは、法定刑の引き上げ、つまり厳罰化だ。たとえば、強姦罪と強姦致死罪の下限は現行、懲役3年と同5年と規定しているが、それを懲役5年と同6年に引き上げる。下限が懲役5年の強盗罪と比較すると、強姦罪がいかに軽いかが理解できるだろう。

性犯罪の法定刑の問題は長年指摘されてきており、遅すぎる諮問と言うべきだが、今日まで改善されずにきた背景には、性を軽視する日本の文化があった。性は人の尊厳そのものであり、それを侵害し、被害者に一生傷を負わせる性犯罪は「魂の殺人」であるという認識が足りなかったのだ。児童ポルノ禁止法も国際社会からの圧力が強まって、ようやく成立している。

法制審の答申を受け、法務省は早ければ刑法の改正案を来年の通常国会に提出する方針だが、これを機に、性の尊厳に対する国民の意識を深めることも必要だろう。

2015.11.20

久方ぶりでも目指す内容は相変わらず

日中韓首脳会談は2012年5月に北京で開催して以来、約3年半ぶり。12年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化で日中関係が悪化するなどして、08年から毎年開いてきた会談が、中断していた。

3年半ぶりの日韓中サミットというわけで、前回の顔ぶれはガラッと違うものだった。韓国は李明博大統領で、中国は温家宝氏、そしてわが国は民主党政権の野田佳彦首相という、隔世の感のある政治家たちである。

さらに、同じ顔ぶれで行われた前年五月に開催された第4回日中韓サミットで合意した内容も、今回、岸田外相が掲げているのとほとんど同じである。岸田外相が、合意を目指す項目として「経済ですとか、文化、環境をはじめとする協力案件、幅広い協力案件」と言っているように、前回サミット( 11年5月22日)でも、同じような項目が成果として掲げられている。

首脳宣言では、東日本大震災直後だっただけに、その犠牲者に哀悼の意が表明されたうえで、「今般の震災は、三箇国の国民の友情の絆及び地理的近接性にかんがみ、三国間協力が必要不可欠であることを想起させた」と表明していた。

そのうえで「三国間協力は、日本の早期復興に確実に貢献するものであるとの理解に基づき、特に災害や困難に直面した際に互いに助け合うことの重要性を共有」し、「様々な分野における三カ国協力を通じ、この困難な状況を乗り越えようとする日本の努力を支えていく決 意」を表明している。

だが、その他の合意内容では「経済貿易大臣及び外務大臣からの提言に留意し」として、経済成長のための日中韓FTA産官学共同研究、同じく経済の刺激を期待するための三カ国間の観光促進を筆頭に上げている。

さらに「次世代のために地球規模の環境問題に対して国際社会で取り組んでいく必要があるとの認識」のもと、この分野での取り組みを率先していく決意を表明。「再生可能エネルギー及びエネルギー効率の推進を通じた、持続可能な成長に向けての協力の重要性を認識」しつつ、「韓国釜山で行われた第13回日中韓三カ国環境大臣会合の結果を支持した」としている。要するに、下部の閣僚間会議で合意・到達した成果を首脳が支持するといった構造の首脳宣言であり、「官僚の作文」と言っても過言ではない。

今回の首脳宣言でも、「従軍慰安婦」の問題などよりも、中国の軍事力の増強、ロシアの軍事力に頼った内政干渉的な動き等、冷戦時代再来ともいえる現象に対して頬かむりしたままなら、東アジア情勢は一層、不透明なものになるのは間違いない。(石)

2015.11.20

異彩放つ鳴り物入り就任の文科相

教科書採択における三省堂の不正問題を幹事社の記者が、担当省庁が対処すべき不祥事として当然の如く質問したところ「けしからんこと」という答弁。さらに食い下がって、具体的な内容に触れて質問しても「けしからんことで、怒っています」と一蹴した馳浩新文科相。

これまで、文部科学副大臣、自民党の文教部会長と文部科学畑を歩いてきて、ついにそのトップの文科相に、今回の内閣改造で就任した。

プロレスラー出身の政治家で、歴史教科書は「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書だけが改正教育基本法に則った教科書だと発言。また、新任会見で学校教師時代に生徒に体罰を行っていたとされ、基本的に左翼的な視点で記事を書くマスコミにとっては挑発的な発言をする要注意大臣であるはずだ。

それでも、新任会見では、体罰はいけない、と述べたと伝えられるなど、記者に対する対応は意外とソツがなさそうだ。いかなる発言をして来ようと、文科相として、どういう発言をするかが問題となる。

この日の会見でも、三省堂の問題をさらに「どのようなところがけしからんと思われるのか」と、さらに記者に突っ込まれると、「じゃ、きちんとお答えします」と述べて、無難なことばかりが書かれた官僚による答弁用の書面を読み上げて終わった。

安倍首相も、手堅い対応ができると踏んで、あえて文科相につけたのだろう。質問する記者の顔をじっと見つめ、所属メディアの名前を確認するかのように、一呼吸おいて答えていく。記者の質問に、最初から誠意をもって答える気風が漂っていた前任者の下村博文文科相とは、かなり対照的な人物だ。

ただ、三省堂と言えば、教科書裁判まで行われたことのある出版社である。左翼的歴史家、家永三郎氏が起こした自筆の高校日本史教科書に関する裁判で、記述が削除されたことを理由に文科省の検定制度に異議を唱えたものだ。これに左翼メディア、知識人が連動した。

もっとも、今回は中学の英語教科書であるが、記者会見の対応は、あまりにそっけなかったのではないだろうか。(亀)