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2016.03.23

心もとない森本部長の指導力

安倍晋三首相が国会などで、憲法改正を自民党の参院選公約として戦うと勇ましく明快な答弁を繰り返しているにもかかわらず、昨年10月新たに党の憲法改正推進本部長に就任した森英介元法相は、2月16日になってようやく初会合を開き、「どういうゴールを目指すかはこれからの取り組みの中で次第に明らかになる」と気の抜けた発言をした。

森氏はさらに、党が作成した改憲草案に沿った改正項目の絞り込み作業を中断し、憲法の制定過程や憲法教育の在り方などについての検証を進める方針を示した。だが、党の改憲推進本部や国会での憲法審査会が積み上げてきた議論を振り返れば、「憲法の制定過程」などはすでに検証し終わっている話。前任者の船田元本部長時代には、テロや大災害時の対応を定める緊急事態条項の創設などの改正項目の絞り込み作業に着手し、他の党との議論もかなり積み重ねてきたはずだ。

こうした森本部長や「もう少し摺り足で進まないと成就しないのではないか」との考え方を示す谷垣禎一幹事長のような慎重姿勢では、なかなか改憲の機運を盛り上げることはできない。野党側も「安倍政権下では、憲法改正に協力しない」などと歩調を合わせている。これらは、国民を眼中に置かず政略的な発想による言動に過ぎない。

森氏が「推進本部では国民の合意形成に向けた土俵づくりの役目を果たしたい」と決断するなら、どういう項目からまず取り組む必要があるかを決めて国民への理解を深める努力をすべきではないか。会合のペースも月一回という程度ではやる気が疑われる。

2016.03.23

新鮮味なく期待感薄い民維新党

民主党の岡田克也代表は、民主党と維新の党の合流を発表した2月26日の記者会見で、「日本の政治の流れを変える日だと私は考えています」と語ったが、多くの国民はこの発言に違和感を持ったことだろう。

合流する維新の衆院議員21人の中には、民主党の出戻り組みが10人もいる。松野頼久代表ら、当時の民主党では将来が見通せないと批判して出て行った面々だ。それが、橋下徹氏らが率いる「おおさか維新」とうまくいかないからといって分裂し、野党共闘という看板を掲げて戻ってきただけの印象だ。新鮮味がなく国民の期待感は初めから薄い。民主党幹部が「国民が喝采したり、支持率が抜きんでて高まるところまで大きく変わらない」と語る通りだ。

「理念・政策の一致」を前提にするというが、身を切る改革を唱える維新と、官公労に支えられている民主との間で政策を一致できるのか。外交・安全保障問題の対案や改憲の是非、アベノミクスへの対案などどれをとっても簡単にはまとまらないだろう。新たな綱領だってつくれるのか。新党名に「民主」を入れようと入れまいと、所詮は政党支持率一桁台同士で足しても10%をようやく超える程度に過ぎない。

ところが岡田氏は「野合で何が悪い」と開き直っている。これでは、弱いから参院選に向け数合わせをして何が悪いと言っているのと同じだ。「これが最後だ」と言い切る岡田氏だが、この〝賭け〟が凶と出る可能性は十分にあろう。

2016.03.23

LGBTの定義の明確化を

記者から質問が出たLGBT(性的少数者)とは、性自認と体の性が一致しない性同一性障害者や、同性に恋愛感情を抱く同性愛者らのことだが、こう説明しても具体的にイメージできない人もいるだろう。

「性的指向」という言葉は近年、メディアに頻繁に登場するようになった。しかし、一般社会ではそれが何を意味するのか、正確に答えることができる人は多くはない。LGBTの言葉さえ、聞いたことがない人がいるほどだ。それほどこの問題は一般の人には身近でない上、言葉の定義の明確化を含めて、課題は多岐に渡る。

性的少数者への差別をなくすための法整備が超党派で議論されていても、その国会議員の中でさえ、この問題に曖昧な認識しかもっていない政治家もいる。しかも、LGBTの中には社会通念に合致しない性行動を取る人も含まれているのだから、そういう人に「理解を深める」というのは何を意味するのか。

どのような人間に対しても人権侵害は許されるものではないが、もし特定の人たちへの人権擁護を語るなら、その人たちへの人権侵害がどれほどあるのかをまず調査すべきであろう。その上で、法整備を検討すべきだ。現在でも、個別に対応すれば解決できる課題も多いはずだ。

法相は「今後もLGBTの方々に対する偏見や差別をなくすために、まずは啓発活動を充実させて、国民の理解を深める」と語ったが、「偏見や差別をなくす」という名の下に、社会通念に合致しない考え方の刷り込みになったり、人の思想・信条、宗教を否定することのないように慎重に進めることが肝要だろう。

2016.03.23

普天間問題で巧妙な受け答え

この日は、会見の冒頭、米軍幹部と日本政府のキャンプシュワブの基地完成の時期を巡っての発言の食い違いを突かれたが、「辺野古移設に係わる工事は昨年10月に着工したばかり」として、遅れについて具体的に語る段階ではない、とかわした。

この普天間基地移設問題は、こじれにこじれてきたテーマ。とりわけ、民主党が政権を取り、鳩山由紀夫首相が「最低でも県外」と発言したことで、沖縄県民にあらぬ期待を持たせたが、現実を無視した発言だったことを鳩山氏自体が後ほど表明し、県外案は沈静化してきた経緯がある。

しかし、会見で最後にまた、フリージャーナリストが鳩山氏の県外案をぶり返し、徳之島(鹿児島県)での基地建設の可能性が米軍により退けられた理由を問いただした。民主党の前衆院議員が外交ルートで調べたところ、運用に支障をきたす「一定の距離」の基準が実は明確ではなく、米軍でも、そのマニュアルは確認できなかったというものだ。

この突っ込みにも、岸田外相は「要は(米軍がマニュアルを)明らかにしていないから確認できないということではないかなと理解している」と名答弁。記者はマニュアルが存在しないのでは、という点を問題視したわけだった。

こうした答弁をされると、水掛け論になるとの予感から記者は二の矢を放つ気を喪失しがちだ。限られた記者会見の中では、しつこく食い下がる質問はしにくい雰囲気が支配している。外相が答えていない内容を違った表現で聞き返すのも二回までである。

そうした状況を踏まえた同外相の答弁術は、なかなか切り崩されにくいことが今回も証明された格好だ。(石)

2016.03.23

通り一遍の組体操危険論に食い足りなさ

組体操での事故は、1980年代から報じられ、死亡事故も何件か起き、その子供の父母が市などに裁判を起こし、賠償金の支払いが決定した事例もある。これまで、義家弘介文部科学副大臣は、文部科学省が組体操を規制することや調査を行うことは「地方分権に反する」として行わない考えを明らかにするとともに、子供たちが組体操を通じて達成感を味わうことの意義を新聞インタビューなどで訴えていた。

しかし、相次ぐ事故の報告を受け、この2月の国会で、文科相は重大な関心を持って取り組むと表明。さらに、この記者会見で、2015年度内に文部科学省が組体操の指針を策定する方針を表明した。

あるアンケートによると、父母からは運動会で子供たちが組体操をしっかり演じるのを見ることで「子供の成長を感じ られる」と意義を強調する声も少なくない。また、これを運動会に取り入れている学校側には児童・生徒の一体感、協調性の教育になるとの意向がある。

人間は、共同でやることでしか成し遂げられないことを通し、達成感を覚え、成長していく側面がある。また、それを通じてお互いの気心が知られていくというのも事実だ。

同会見からほどなくして、大阪市は、平成27年度からの組体操の全面禁止を決定。今回の議論を通じて「組体操からの撤退」傾向が広がりそうだ。事故が起きないよう、安全性と細心の注意を払いながら、組体操という運動会の楽しみを残していって欲しいと思う。

文科相自身は、プロレスラー出身で頑強な身体を鍛え上げた人物。同会見で、通り一遍の子供の身体の安全論しか聞けなかったのは食い足りなかった点である。(亀)