2018.02.20
他人事になった難民の苦難
上川陽子法相が「難民認定制度の運用についてさらなる見直しを行う」と語ったのは、難民認定申請者に一律に認めてきた在留や就労を大幅に制限することで、その理由は近年、就労目当ての申請者が急増しているからだ。
2010年3月以降、政府は短期滞在や留学、技能実習などの在留資格者が難民認定を申請すれば、申請から6カ月後、一律に就労を認めてきた。それ以降、申請者が急増している。同年には、1202人だったが、16年には1万人を突破。昨年は9月までだけでも1万4000人に達した。
就労を認めてきたことから、「日本で難民申請すれば働ける」という認識がアジア諸国を中心に広まっているとされるが、就労を厳しく制限することで、それを正し、就労目的の申請者を減らす効果が期待できる。申請者が減れば、短い審査期間で本当の難民を見つけ出すことも可能となろう。
記者会見で「日本では難民認定者数は非常に少ない」と記者が言っているが、もともと日本に来たいという難民はあまりいない。難民認定者が少ないから、「日本は難民に冷たい」というのは表面的な見方である。
一方、世界で難民が増えているにもかかわらず、難民に対する国民の関心が薄くなっているのは事実。わが国が難民認定制度を導入したのは1982年。背景には、共産主義の圧政から「ボートピーピル」として海上に逃れたインドシナ難民問題があった。戦火を体験した世代がまだ多く生きている時代には、平和な日本にも難民の苦難に心を痛める人が少なくなかったのだ。
日本がもっと積極的に難民を受け入れるという難民政策を打ち出すなら、難民に対する国民の理解が不可欠だ。それはとりもなおさず、国際社会に生きる覚悟を問うことでもある。
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